「僕が赤くなったから、そんなことを言うんですね」と、「アリョーシャ」がだしぬけに言いました。
これは、「ドミートリイ」の会話中の「俺は卑しい欲望をいだき、卑しさを愛する男でこそあるけど、恥知らずじゃないんだよ。」の所に対応しており、ここで「アリョーシャ」は「おや、赤くなったな、目がかがやいたぞ」と言われています。
「アリョーシャ」は言います。
「僕が赤くなったのは、兄さんの話のせいでもなけりゃ、兄さんのしたことに対してでもなく、僕も兄さんとまったく同じだからなんです」
「お前がだって?おい、ちょっと無理したじゃないか」と「ドミートリイ」。
ここは、ユーモア精神にあふれていますね。
「アリョーシャ」もそんなことは、ここで言わなくてもいいと思いますが、ここではそれを言った方がいいと判断したのでしょう。
「いいえ、無理してるわけじゃないんです」
しかし、「アリョーシャ」はむきになって言いました(どうやら、この思いはもうだいぶ前から心にあったようだった)。
そして、続けて「しょせん同じ階段に立っているんですよ。僕はいちばん下の段だし、兄さんはもっと上の、どこか十三段目あたりにいるってわけです。僕はこの問題をそういうふうに見ているんですよ、しかしどっちみち同じことで、まるきり同類なんです。いちばん下の段に足を踏み入れた者は、どうせ必ず上の段までのぼっていくんですから」
卑しい情欲の階段というわけですね。
「十三段目あたり」というのは、次は処刑台というような意味でしょうか。
「じゃ、つまり、全然足を踏み入れずにいるべきなんだな?」
「できるなら、まるきり足を踏み入れないことですね」
「で、お前はできるのか?」
「たぶんだめでしょうね」
「ドミートリイ」としては、「アリョーシャ」の予想もしかなった突然の告白に驚いたことでしょう。
まして「ドミートリイ」は、「リーザ」が「アリョーシャ」に恋心をいだいており、「アリョーシャ」もまんざらでもないことを全く知らず、ただ真面目に修道院生活を送っているだけだと思っていたと思いますから。
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