「ドミートリイ」の長い話のあと、今さらながらという気もしますが、どこに行くのかと聞かれた「アリョーシャ」は、「お父さんのところへですけど、その前にカテリーナ・イワーノヴナのところに寄るつもりだったんです」と答えました。
「彼女と、それから親父のところへだって!ほう!まさに、どんぴしゃりだ!」と「ドミートリイ」は答えます、そして、自分がお前つまり「アリョーシャ」を呼ぼうとしたのは何のためだと思うかと聞き、続けます。
「俺がお前に会いたがり、心の襞という襞、肋骨という肋骨でまでお前を求め、渇望していたのは、何のためだと思う?まさしく、お前を親父のところへ、そのあと彼女、つまりカテリーナ・イワーノヴナのところへ使いにやって、それで彼女とも親父ともけりをつけるためなんだぜ。天使を派遣するってわけだ。だれをやってもいいようなもんだが、俺としちゃ、ぜひ天使に行ってもらう必要があったんだよ。それなのに、お前が自分から彼女と親父のところへ行ってくれるとはな」
普通の会話ならまず最初に、何をしに行くのかと聞くと思うのですが、ここは「ドミートリイ」の精神状態が普通ではありませんし、もともと自己中心なところがありますのでこのようになるのでしょう。
「アリョーシャ」は「カテリーナ・イワーノヴナ」のところに行ってから「フョードル」のところへ行こうとしていたのですよね。
しかし、「ドミートリイ」は「フョードル」のところに行ってから「カテリーナ・イワーノヴナ」のところへ行ってくれと言う、「ドミートリイ」にとってはその順番が大切なのです。
なぜ順番が大切なのかは後でわかりますが、いずれにせよ「カテリーナ・イワーノヴナ」には別れを告げる気持ちでいるのでしょう。
「アリョーシャ」は「ほんとに僕を使いにやるつもりだったの?」と病的な表情を顔にうかべて言いました。
そう聞くのも無理はありません、まったく偶然に通りかかっただけなのですから。
「ドミートリイ」は「待てよ、お前はそのことを知っていたのか。見たところ、お前はすぐに何もかもさとったらしいな。でも、黙っていてくれ、今のところ黙っていてくれよ。憐れむなよ、泣かんでくれ!」と言いました。
ここで、何をさとったと言っているのでしょう、わかりませんが、「アリョーシャ」が「フョードル」はともかくとして、直接的な接点のない「カテリーナ・イワーノヴナ」に会うということの意味を考えると、何かがピンときたのでしょう。
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