2017年2月25日土曜日

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「ドミートリイ」の会話の続きです。

「アリョーシャ、俺はこの文章を俺の卑しい口調で伝えるにさえ値せぬ人間なんだ!この手紙は今日にいたるまで俺の心を突き刺したんだ。いったい今の俺が気楽だと思いかい、今日の俺が楽な気持でいるだろうか?あのとき、俺はすぐ彼女に返事を書いた。どうしても自分でモスクワへ行くことはできなかったんだ、涙ながらに手紙を書いたよ。ただ一つ、永久に恥じていることがある。つまり、彼女は今や持参金つきの裕福な身なのに、俺は乞食同然のがさつ者だなんて、書いたんだよ。金のことに触れちまったんだ!そんなことは控えておくべきだったのに、つい筆がすべっちまったのさ。一方、モスクワにいるイワンにすぐ手紙を書き、その手紙で一部始終をできるかぎり説明してやった。六枚くらいの手紙になったよ。そして、イワンを彼女のところにさし向けたんだ。なんだってそんなに俺を見つめてるんだい、そうしてそんな目で眺めるんだ?そうさ、イワンは彼女に惚れちまった、今でも惚れてるさ、俺は知ってるんだ。お前たち流に世間的に見れば、俺はばかなことをしでかしたわけだが、ことによると、その愚かさだけが今や俺たちみんなを救うことになるかもしれないんだぜ!ああ!彼女がイワンをどんなに敬い、どんなに尊敬しているか、お前にはわからないかね?俺たち二人を比較して、彼女が俺みたいな男を愛せるとでも言うのかい、ましてここであんなことが起ったあとでさ?」

「ドミートリイ」は「カテリーナ」の手紙を「その手紙も今でも手もとにあるよ、いつも身につけているし、死ぬときも持って行くんだ」と言っていますので7~8年もいつも持ち歩いているということになります。

これはちょっと不自然なことですが、彼にとっては余程の影響があったのでしょう。

「ドミートリイ」はその求婚の手紙を受け取りすぐに書いた返事はおそらく断りの手紙だったのでしょうが、そこにお金のことを理由とするというような内容を書いてしまったことを「永久に恥じている」と言っています。

そして、「ドミートリイ」は真意を手紙に書き「イワン」にそれを託して「カテリーナ」に伝えたのですが、結局は婚約しているわけですから、このあたりの詳しいやりとりはどうなっているのでしょうか。

このとき「イワン」はモスクワの大学に通っていたと思います。

ここでは、また「ドミートリイ」が「カテリーナ」を愛しているのかどうかはっきりしません。

本当のことはわかりませんが「ドミートリイ」は自分自身を嫌悪しており、「カテリーナ」がそんな自分を愛すること自体に納得がいかないのでしょう。

「・・・ましてここであんなことが起ったあと」というのは、「グルーシェニカ」をめぐる大騒ぎの一件ですね。


ここまで見てくると、一見「カテリーナ」をめぐる「ドミートリイ」と「イワン」の三角関係と、「グルーシェニカ」をめぐる「ドミートリイ」と「フョードル」の三角関係があるようですが、前者のほうは、「ドミートリイ」の愛がいまひとつ曖昧であり、「カテリーナ」の愛もちょっと人類愛的な愛のようであるので、三角関係と言えるかどうか不明確であり、後者については、完全な三角関係のようではありますが、「ドミートリイ」が「グルーシェニカ」に抱く愛が「カテリーナ」への無意識的な愛の裏返しのような複雑なところがあるため、こちらも完全とは言えないかもしれません。


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