「ミーチャ」は「アリョーシャ」の手をつかんで言いました。
「なあ、アリョーシャ、屈辱だよ、今だって屈辱に泣いているのさ。この地上で人間は、恐ろしいほどいろいろなことに堪えていかなけりゃいけないんだ。人間には恐ろしいほどたくさん災厄がふりかかるんだよ!この俺を、コニャックばかり飲んで放蕩の限りをつくしている、将校の肩章をつけたただの下種野郎にすぎない、なんて思わないでくれ。俺はね、ほとんどこのことばかり考えているんだ。この虐げられた人間のことばかり考えているんだよ、ほらを吹いていないかぎりはな。これからは、ほらを吹いたり、空威張りしたりしたくないもんさ。俺がそういう人間のことを考えるのは、つまり自分自身がそういう人間だからさ。
卑しい世界から人が
心で立ち直るためには、
古き母なる大地を
とわの契りを結ぶことだ。
(訳注 ドミートリイは自己の告白を『歓喜の歌』によってではなく、同じシラーの詩の『エレウシスの祭』によってはじめている)
この詩はシラーの詩の『エレウシスの祭』だったのですね。
詩の入り口の「さて赤ら顔したシーレンは、足どりふらつく驢馬にのり、」と出口の「卑しい世界から人が心で立ち直るためには、古き母なる大地をとわの契りを結ぶことだ。」というのがポイントで、うまく次の話に繋がります。
そして、「ドミートリイ」は将校の肩章を付けているのですね。
これは、日常的にいつもつけていると思うのですが、今でも軍の将校ということで収入を得ているのでしょうか。
シラーの詩の『エレウシスの祭』の全文をネットでさがしたのですが見つかりませんでした。
「ウィキペディア」などの「エレウシス」を調べると「エレウシス(古代ギリシア語: Ἐλευσίς / Eleusis)は、古代ギリシアのアテナイに近い小都市。ギリシア神話に登場する女神デーメーテールの祭儀の中心地として知られる。また、古代の悲劇詩人アイスキュロスの生誕地でもある。現在はエレフシナ(現代ギリシャ語: Ελευσίνα / Elefsina)と呼ばれる。ギリシャ共和国アッティカ地方に属する基礎自治体(ディモス)であり、西アッティカ県の県都である。」とありました。
また、「エレウシスの密儀」というのが有名で、次のような説明がありました。
「デーメーテールの祭儀はエレウシスの祭儀、またはエレウシスの密儀と呼ばれ、古典古代時代最もよく知られた密儀宗教(英語版)のひとつであり、しばしばたんに「密儀」として言及されることもある。エレウシスの密儀は紀元前1700年頃ミケーネ文明の時代に始まったと言われている。マーティン・P・ニールソン(英語版)は、この密儀が「人を現世を超えて神性へと到らせ、業の贖いを保証し、その人を神と成し、その人の不死を確かなものとなす」ことを意図されていたと述べている。その内容を語ることは許されなかったため、断片的な情報のみが伝えられている。参加者の出身地を問わないこと(アリストパネスの断片による)、娘ペルセポネーを探すデーメーテールの放浪およびペルセポネーの黄泉からの帰還の演劇的再現が一連の密儀の中核をなしていたであろうことが推定されている。密儀の参加者には事前に身を浄めることが要求され、その密儀は神の永遠なる浄福を直接見ることであると言われた。キリスト教が広まり、ローマ皇帝テオドシウス1世により多神教的異教の祭儀が禁止されると、エレウシスの密儀も絶えた。ドイツの哲学者フリードリヒ・シェリングは、その著書の中で、前哲学的思惟の形態としてのエレウシスの密儀についてしばしば論じている。」
「ドミートリイ」の引用で使われている「ケレース」については、「ケレース(Ceres)は、ローマ神話に登場する豊穣神、地母神、地下神。長母音を省略してケレスとも表記される。英語表記ではシリーズ、シアリーズとも呼称される。古くからギリシア神話のデーメーテールと同一視されたため、ローマ神話での本来の性格はよく分かっていない。ローマ神話におけるエピソードも、ほとんどは本来デーメーテールのものである。なお、ギリシア神話のケーレスとは無関係である。また、大地の女神であることから冥界の神ともされ、死人を出した家では、ケレースに供物を捧げることによって死の穢れを祓うことが行われていた。その祝祭ケレーアーリア(Cerealia)は、古くは4月19日に執り行われたが、紀元前3世紀末以降は、4月12日からの8日間にわたって行われた。これは4月15日の大地母神の祝祭とも深く関係している。ケレースは農業、特に穀物の収穫を司るため、英語で穀物を意味するシリアル(cereal)の語源となった。また、ビールを意味するスペイン語(es:cerveza)やポルトガル語(pt:cerveja)の語源である。初めて発見された小惑星、ケレスの名は、この女神に由来している。ケレースはその権能から、古来よりしばしば各国の貨幣にその姿が登場し、近代ではフランスの20フラン金貨に多く見られる。」と書かれていました。
「ケレース」はシリアル(cereal)の語源というのが面白いのですが、ここでは「ケレース」=「デーメーテール」のことですね。
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