2017年3月18日土曜日

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「どうして、発作がひんぱんになったのかな?」と、ときおり、彼は新しいコックの顔を見つめて、不機嫌そうに言うことがありました。

そして、「せめて、嫁でももらったらどうだ、なんなら世話しようか?」

しかし、「スメルジャコフ」はそんな言葉に対して、腹立ちのあまり、青ざめるだけで、なんとも答えませんでした。

「フョードル」はあきらめて引きさがるのでした。

肝心なのは、「フョードル」が彼の正直さを信じきっていたことで、何一つ取ったり盗んだりする男ではないと、頭から信じこんでいるのでした。

一度こんなことがありました。

「フョードル」が酔払って、受けとったばかりの百ルーブル札を三枚、わが家の庭の泥濘の中に落し、翌日になってやっと気づいたことがありました。

あわててポケットというポケットを探しにかかったとたん、ふと見ると百ルーブル札が三枚そっくりテーブルの上にのっているのでした。

どこから降って湧いたのだろう?

「スメルジャコフ」が拾って、昨日のうちに届けておいたのでした。

「いや、お前みたいな男は見たことがないよ」

そのとき「フョードル」はきっぱりと言いきって、彼に十ルーブルを与えました。

作者が肝心だというのは、「フョードル」が「スメルジャコフ」の正直さを信じきっていたことですが、もちろんそれは召使として当然にそうあらねばならないことです。


「スメルジャコフ」は料理の腕と正直さ、それ以外のことについては相当な変わり者です。


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