「じゃ、これからやっぱりカテリーナ・イワーノヴナのところへ行くわけか?例の『くれぐれもよろしく』ってやつだな?」と、ふいに「イワン」がにやりとしました。
「アリョーシャ」はどぎまぎしました。
「イワン」はにやりとし、「アリョーシャ」はどぎまぎしています。
この「イワン」のにやりは、彼が少なからず好意を抱いている「カテリーナ」に対してのある種の思い出し笑いのようなものであり、「アリョーシャ」のどぎまぎは、「アリョーシャ」の彼女に対する極度の苦手意識からきているのでしょうか。
「どうやら俺にも、さっきわめいていたことの意味や、それ以前の多少のいきさつがわかってきたよ。きっとドミートリイはお前に、彼女のところへ行って、言伝てを・・・つまり・・・その、一口に言や、《よろしく》言ってくれるように頼んだんだろう?」
「イワン」がわかってきたという「さっきわめいていたことの意味や、それ以前の多少のいきさつ」とは、具体的にはどの会話のことでしょう、「さっきわめいていたこと」というのは、「今となっちゃイソップ爺に金を話なんぞ一言もするな、カテリーナには今すぐ必ずこう伝えてくれ。『兄がよろしくとのことでした。よろしく言ってました。よろしくと!くれぐれもよろしく!』とな」という「ドミートリイ」の発言の部分でしょうか。
「ドミートリイ」がしつこくこだわっているのこの《よろしく》という言葉はいろいろな意味を含んでおり、なおかつ根本的なことを曖昧にしているようでもありよくわかりません。
「兄さん!お父さんとドミートリイ兄さんとの間の、こんな恐ろしいことは、どういう形で終るんでしょうね?」と、「アリョーシャ」は叫びました。
さっきも「フョードル」が「アリョーシャ」に「グルーシェニカ」のところへ行ってくれと頼んだのですが、「アリョーシャ」は「もし、会ったら、きいてみますけど」と言ってはぐらかしましたが、ここでも、「イワン」の質問をうまくはぐらかして、話題を変えることに成功しています。
「的確に予想はできんがね。おそらく、どうってことはないだろ。なんとなく立ち消えになるさ。あの女は、けだものだよ。いずれにせよ。爺さんは家の中に閉じこめといて、ドミートリイを家に入れないことだな」と、「イワン」。
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