2017年4月21日金曜日

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広小路にきわめて広大な、快適な家を借りている「カテリーナ」のところへ「アリョーシャ」が向ったときは、すでに七時で、暗くなりかけていました。

彼女が二人の叔母といっしょに暮していることは、「アリョーシャ」も知っていました。

もっとも、一人は姉の「アガーフィヤ」にとって叔母にあたるだけで、これはかつて「カテリーナ」が貴族女学校を出て帰省したとき、姉といっしょに世話をやいてくれていた、例の、父の家にいた無口な女性でした。

もう一人の叔母は、貧しい出のくせに、偉そうにもったいぶったモスクワ・マダムでした。

噂によると、二人とも何事かにつけ「カテリーナ」の言いなりで、もっぱら世間的対面のために彼女に付いているということでした。

「カテリーナ」が言うことをきくのは、病気のためにモスクワに残っている恩人の将軍夫人に対してだけで、ここへは毎週くわしい近況を書いた手紙を二通ずつ出す義務になっていました。

「カテリーナ」は広大な、快適な家に、二人の叔母と暮らしているのですね。

そのうちの一人の叔母は、前に登場しました。

亡くなった「カテリーナ」の父である中佐の前の妻の妹です。

「ドミートリイ」が父の家の隣の家の庭で「アリョーシャ」にこう話していました。

「最初の細君は平民かなにかの出で、娘を一人残したんだが、これも庶民的な娘だった。俺のいた当時、すでに二十四、五で、父親と、死んだ母親の妹にあたる叔母さんといっしょに暮していた。」と、そして「叔母さんというのは、口数の少ない素朴な人だったし、姪、つまり中佐の姉娘はきびきびした素朴な娘だった。」と。

もう一人の叔母は、「貧しい出のくせに、偉そうにもったいぶったモスクワ・マダム」とのことですが、「モスクワ・マダム」とは何でしょうか。

そして「カテリーナ」が言うことをきくという、そして、近況を手紙に書いて送っている「モスクワにいる恩人の将軍夫人」とは、「カテリーナ」の親類で相続人である親しい二人の姪を天然痘でいっぺんに失くし、「カテリーナ」を実の娘のように思い、八万ルーブルをぽんと手渡した女性です。

「カテリーナ」の母親は名門の偉い将軍の娘ですので、「モスクワにいる恩人の将軍夫人」とはこの人ですね。

ここでもわかるように、「カテリーナ」の社会的地位は相当なものだと思います。


しかし、直接書かれてはいませんが、「ドミートリイ」は、「カテリーナ」のようなタイプではなく、気さくで庶民的な「アガーフィヤ」の方が好きなのでしょう。


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