「アリョーシャ」が玄関に入り、ドアを開けてくれた小間使に取次ぎを頼んだとき、広間ではもう彼の来訪を知っていたようでしたが(たぶん、窓からでも姿を見かけたでしょう)、「アリョーシャ」はふいに何か騒がしい気配を耳にし、女性の走る足音や、衣ずれの音がきこえただけでした。
どうやら二、三人の女性が部屋から走りでていったようでした。
自分の来訪がこれほど波紋を起しえたのが、「アリョーシャ」には奇異に思われました。
おそらく「アリョーシャ」が訪ねてくることなど全く予期していなかったと思いますが、いくら窓からその姿を見かけたとはいえ、咄嗟に人払いをするなんてことはできるのでしょうか、それとも何らかの情報で彼が来るかもしれないということを知っていたのでしょうか。
しかし、彼はすぐに広間に案内されました。
それはまるきり田舎調でない、上品な家具を豊かに配した、広い部屋でした。
ソファ、やソファ・ベッド、小ソファ、大小のテーブルなどが、たくさん置かれていました。
壁には何枚もの絵が、テーブルには花瓶やランプがあり、花がふんだんに飾られ、窓際にはガラスの水槽までありました。
「カテリーナ」は未婚の女性ながらこの家では主人であり、何人もの女性に囲まれて優雅な暮らしをしていますね。
なぜ働いてもいないのにそのような暮らしができるかと言うと、「カテリーナ」が唯一言うことをきくという例の「モスクワにいる恩人の将軍夫人」から八万ルーブル=八千万円をもらったからです。
ですから「カテリーナ」は、どんな理由があるのかはわかりませんが「ドミートリイ」に頼んで、どこか県庁所在地の町へ行って、そこからモスクワにいる姉の「アガーフィヤ」に三千ルーブル=三百万円を書留で送ってくれるように頼んだんですね。
結局そのお金を「ドミートリイ」は送らなかったのですが。
夕暮れのため、室内はやや暗い状態でした。
実に長い一日ですね。
まだ、これから続きそうなのですが。
修道院での待ち合わせが、十一時三十分で、今は午後七時ですから、この七時間半の間に実にいろいろなことがあったということです。
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