2017年4月29日土曜日

394

「もしかすると、兄は結婚するかもしれません」と、目を伏せて、「アリョーシャ」は悲しげにつぶやきました。

「結婚しないと、申しているじゃありませんか!あの娘さんは天使ですわ、あなたはそれをご存じ?ご存じですの!」と、突然、異様なほどの熱をこめて、「カテリーナ」が叫びました。「あの方はこの上なくファンタスチックな女性ですわ!あたくし、あの人がどんなに魅惑的か承知していますけど、どんなにあの人が善良で、しっかりしていて、高潔な人であるかも知っていますの。どうしてそんな目でごらんになるんですの、アレクセイ・フョードロウィチ?もしかすると、あたくしの言葉にびっくりなさったのかしら、あたくしの言葉が信じられません?アグラフェーナ・アレクサンドロヴナ(訳注 グルーシェニカの正式な名前)!」と、だしぬけに彼女は隣の部屋をふりかえって、だれかに叫びました。「いらっしゃいなかわいい人がいらしてますわ、アリョーシャさんよ。あたくしたちのことを、すっかりご存じなの、お顔を見せてあげて!」

「お声のかかるのを、カーテンのかげでひたすら待ちわびてましたわ」と、やさしい、いくらか甘たるい女の声がひびきました。

ここまでたくさんの伏線があり、この家の中にいるということは予想できましたが、とうとうその「グルーシェニカ」が姿を見せます。

彼女については、ここまでの物語の進展の鍵をにぎるような重要人物であることは確かです。

彼女がこの騒動の直接的な原因と言ってもいいでしょう。


ここでは、まだその声だけですが。


0 件のコメント:

コメントを投稿