2017年4月3日月曜日

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「本当だとも。しかし、俺はあの長老を尊敬しとるよ。あの長老には、何かメフィストフェレス的なところがある、というよりむしろ、『現代の英雄』(訳注 レールモントフの小説)の中の・・・アルベーニンだったかな(訳注 『現代の英雄』の主人公はペチョーリン。アルベーニンは『仮面舞踊会』の主人公)・・・ つまり、あの男は色好みだぞ。あれはたいへんな好色漢だから、俺なら今だって、もし娘が女房があの爺さまのところへ懺悔に行ったりしたら、心配でならんだろうよ。あの爺さまがどんなふうに話をはじめるか、知ってるかい・・・おととし、あの長老が俺たちをお茶に招いてくれたことがあったんだ。リキュールつきさ(奥さま連中がリキュールを差し入れてくれるんだな)。ところが、昔のことをおおげさに吹聴しはじめたんで、こっちは腹をかかえて笑ったもんだよ・・・特に、すっかり衰弱しきったさる女性を治療してやったときの話なんぞはな。『足さえ痛くなければ、取っておきの踊りをひとつご披露するところですがの』なんて言ってさ。どうだい?『わたしも若い時分には、少なからず道楽をいたしましてな』と、きたもんだ。あの長老は商人のデミードフから六万ルーブル巻きあげたんだぜ」

メフィストフェレスとは、「16世紀ドイツのファウスト伝説やそれに材を取った文学作品に登場する悪魔。一般にゲオルク・ファウストが呼び出した悪魔として知られ、ファウストを題材とした作品での風貌や性質がよく知られている。中でもゲーテの『ファウスト』が有名。ファウスト伝説のメフィストフィレスは、この世におけるファウストの望みを叶える代わりに、その魂をもらう(死後は自分の支配下に置く)ことをファウストと取り交わす。メフィストフィレスは契約に忠実な様子を見せる一方で、巧みな弁舌でファウストを操作しようとする。その結末は作品によってかわり、メフィストフィレスの目的が達成される場合もあれば、ファウストの魂を手に入れられないこともある。また悪魔としての設定も、作品によって異なる。マーロウの『フォースタス博士』に登場するメフィストフェレスは、ルシファーに仕える悪魔で、彼と共に神に反逆したことになっている。ゲーテの『ファウスト』に登場するメフィストフェレスは誘惑の悪魔とされ、神との賭けでファウストの魂を悪徳へ導こうとする。」

レールモントフは「帝政ロシアの詩人、作家。」

小説『現代の英雄』は、「ロシアの作家 M.レールモントフの小説。 1839~40年発表。『ベーラ』『マクシム・マクシムイッチ』『タマーニ』『公爵令嬢メリー』『運命論者』の5編から成る。作者の旅行記の形で始り,コーカサスを旅行中に出会ったマクシム・マクシムイッチから聞いた話として1編と2編が展開され,主人公ペチョーリンとベーラの恋,およびベーラの死が語られ,あとの3編がペチョーリンの手記の形で,黒海沿岸の町タマーニでの事件,令嬢メリーをめぐる主人公とグルシニツキーとの決闘などが語られる。なにものにも情熱を傾けられない「余計者」を主人公にして巧みに構成され,A.プーシキンの『エブゲーニー・オネーギン』と並ぶロシア文学の古典として高い地位を占めている。」

また、「夭折の詩人レールモントフ唯一の完結した小説にしてロシア文学史上、常に掲ぐべき傑作。雄大なコーカサスの自然を背景にのちのドストエフスキーによってより鮮明に展開される自己中心主義等、人間の病的心理を初めて描きロシア的テロリズムの源流ともなった作品。」ともネットに掲載されています。

そして、この小説には関係ないのですが、ロシアンルーレットについて、それを「髣髴とさせる古い記述として、ミハイル・レールモントフの『現代の英雄』(1840年)の最終章である「運命論者」に、ロシア軍のセルビア人中尉が拳銃の銃口を自分の額に当てて引き金を引くという賭けを行う場面が登場する。しかし作中では賭けに特別な名称は示されず、またその賭け自体もそれを行ったセルビア人中尉が即興で思い付いたものとして描写されている。」とありました。

『仮面舞踊会』とは、「レールモントフの代表的な戯曲とされるのがこの『マスカラード 仮面舞踏会』である。この『マスカラード』の上演のためにハチャトゥリアンの『仮面舞踏会』が作曲されたという経緯もあるので、音楽に通じている方の間では意外と知られている作品なのではなかろうか。現代の読者にとってさほど斬新な筋書きではないかもしれないが、ロシア文化に興味のある方ならば一読の価値はあるように思う。身分を問わず誰もが参加することができるロシアのマスカラード。仮面で顔を隠しながら恋愛遊戯にふけろうとする貴族たちも参加しているが、顔が見えないからこそ、不幸な誤解を招くことになり・・・。戯曲が舞台で演じられるのを見ている場合には役者の服装や年齢層といった多くの情報源があるだろうが、『マスカラード』は登場人物に関する説明的な語句が少ないため、何かと読者の想像力で補って読む必要がありそうだ。『マスカラード』にはいかにもレールモントフらしい退廃的な雰囲気がよく表れている。これといった生き甲斐も見出すことができず、話の種といえば賭博と決闘というロシア文学草創期の一つの典型的なスタイルの男性像が描かれているのだが、このような典型を作り上げるのに一役買ったのがレールモントフなのだから、『マスカラード』に典型的な人物が登場するのも当然と言えば当然のことなのかもしれない。少し残念なことに、本書を読んで訳文がこなれているとは言い難いという印象を受けた。本書がロシア文学を専門とする研究者による翻訳ではないためなのかもしれないが、そうはいっても、『現代の英雄』を通じてレールモントフに興味を持ったところで他の作品の翻訳がほとんど手に入らないという現状を思えば、『マスカラード』の出版は大いに歓迎すべきことであるように思う。引き続きレールモントフの他の作品が出版されることに期待したい。」という一文を見つけました。

この『仮面舞踊会』というのは、あの有名な音楽の基になった小説なのですね。

「旧ソビエト連邦時代のグルジア出身のアルメニア人音楽家アラム・ハチャトゥリアンの作曲した仮面舞踏会とはミハイル・レールモントフの戯曲『仮面舞踏会』を題材にした音楽作品である。当初は劇音楽として作曲されたが、後に作者本人によって管弦楽のための組曲に編成された。」とのことです。


それにしても、「フョードル」の知識はたいしたもので、いくら酔っ払っていても自然と出てくるのですね。


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