「どうして、盗んだんですか?」
この一連の「フョードル」との受け答えは、「イワン」でしょうか、「アリョーシャ」なのでしょうか、どちらともとれますが訳文では書かれていませんのでわかりません。
「商人があの長老を善人とみこんで持ってきたんだよ。『預かってください、明日、家宅捜査をされますんで』長老は預かったあげく、『あれは教会に寄付したんでしょうがの』と言ったそうだ。だから俺はあいつに言ってやったよ、卑劣漢めって。ところが相手はこう言うじゃないか、いいえ、卑劣漢じゃありません、心が広いのです、だとさ・・・しかし、これはあの爺さまじゃなかったな・・・これは別の男だ。別な男と混同しちまったのに、気づかんのだからな。さて、もう一杯やって、それで十分だ。壜を片づけてくれよ、イワン。俺が嘘っぱちを並べたてていたのに、どうして止めてくれなかったんだ、イワン・・・嘘つきと言ってくれなかったじゃないか?」
「そのうち自分でやめるだろうと、わかってましたからね」
「嘘つけ、それは俺に対する憎しみからだな、憎しみからに決っとる。お前は俺を軽蔑しているんだ。俺に家へ乗りこんできて、俺の家で暮しながら、俺を軽蔑してるんだ」
つまり、「商人のデミードフから六万ルーブル巻きあげた」という話は、嘘なのですね、そんなわけはありませんね。
「フョードル」が「いいえ、卑劣漢じゃありません、心が広いのです」と面白く話のオチをつけたいがための創作だったのでしょう。
「フョードル」はこの嘘の話を「イワン」が止めてくれなかったことに文句を言っていますが、ということは彼の家計の詳細を「イワン」は知っているのでしょうし、そんなことが嘘であることなど当然知っているのでしょう。
このように「フョードル」は何か事あるたびに「イワン」については、非難めいたことを言っており、我が子ながらこのタイプの人間とはあまり相性が合わないのでしょう。
「もう引き払いますよ。コニャックがまわりましたね」
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