2017年4月6日木曜日

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「兄さんに腹を立てないでください!兄さんにからむのはやめてください」と突然「アリョーシャ」が一途な口調で言いました。

「え、そうか、そうするか。ああ、頭が痛い。コニャックを片づけてくれよ、イワン、頼むのもこれでもう三度目だぞ」と「フョードル」は考えこみ、ふいににんまりとずるそうに笑いました。

「こんなもうろく爺に腹を立てるなよ、イワン。お前が俺をきらっているのはわかってるが、それでも腹を立てるのだけはやめてくれ。俺なんざ好かれる理由がないからな。チェルマーシニャへは行ってくれよな、俺もあとから行くからさ、お土産を持って。あそこで一人、かわいい子を拝ませてやるよ、ずっと前から目をつけていたんだ。今のところまだ、はだしの小娘だけどな。はだしの小娘だからといって、おじけをふるうことはないさ、軽蔑しちゃいかんよ、まさに絶品だぜ!」
こう言って、彼は自分の手にチュッとキスした。

「イワン」に話しかけながら「フョードル」が「考えこみ、ふいににんまりとずるそうに笑い」ったのは、この絶品という小娘のことを思い出したからでしょう。

そのような小娘にそういった感情を抱くのも危ない性格と言えるでしょうが、それを息子に話すというのも普通ではありません。

「俺にとっちゃな」と得意の話題に入ったとたん、一瞬しらふに返ったように、彼はにわかに元気づきました。

こんな場面で元気になってくれても、聞いている方は困りますね。


「フョードル」は良く言えば自分の欲望に忠実であり、なおかつ正直者なんでしょうが、悪く言えば病気と言われても仕方ありませんね。


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