「すっかり衰弱なさって、昏睡状態に陥られた」
「パイーシイ神父」は「アリョーシャ」に祝福を与えたあと、小声で告げました。
「お起こしするのもむずかしいほどだ。もっとも、お起こしする必要もないが。先ほど五分ばかりお目ざめになって、修道僧たちに祝福を伝えてくれるようお頼みになったうえ、ご自分のために夜の祈りを捧げてくれるよう、みなにお頼みになっておられた。明朝、もう一度、聖餐を受けるおつもりだそうだ。お前のことを思いだしておられたぞ、アレクセイ、お前がもう出ていったかと、おたずねになられたから、町に行っているとお答えしたところ、『そのためにこそ、あれに祝福を授けたのだ。あれの居場所は向うだ、今のところここではない』と、こうおっしゃっておられた。お前のことをいとしげに、心配そうに思いだしておられたぞ、身にあまる光栄だ、わかるね?ただ、どうして当分俗界にいるようにお定めになられたのかな?つまり、お前の運命に何事か予見なさったのだろう!よいかな、アレクセイ、たとえ俗界に戻るにせよ、それは長老さまがお前に課された修業のためであって、決してはかない軽はずみや、俗世の享楽のためではないのだからね・・・」
「ゾシマ長老」は「アリョーシャ」に彼の「居場所は向こうだ」と言っています。
そして、「今のところここではない」と言っています。
「パイーシイ神父」も「どうして当分俗界にいるようにお定めになられたのかな?つまり、お前の運命に何事か予見なさったのだろう!」と言っています。
そして「今のところ」「当分の間」という条件が付いています。
少なくとも「ゾシマ長老」はカラマーゾフ家の揉め事が抜き差しならぬところまで行くことを予見しているかのようです。
「アリョーシャ」を送り出したのは、万が一の場合を回避させることを期待したからでしょうか、それとも「パイーシイ神父」が言うように本人の修行のためでしょうか。
そして、「ゾシマ長老」は「アリョーシャ」が戻ってくると信じています。
それは、この一件が片付いてからか、それとももっとはるか何十年も先のことであるかわかりませんが最終的には神のもとに戻ってくるということでしょうか。
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