「まあ、それでいいんですの、あなたともあろう方が、それもそんな服装をして、中学生なんぞとかかりあいになったりするなんて!」まるで彼に対して何かの権利でも持っているかのように、彼女は腹立たしげに叫びました。「そんなことをすれば、あなた自身まで子供と同じじゃありませんか、それこそいちばん小さな子供と同じだわ!でも、その生意気な子供のことは、なんとか探りだして、話をきかせてちょうだい。何か秘密がありそうですもの。今度は次のお話ね。でも、その前に伺っておきたいの、傷が痛いでしょうけれど、それでも、ごくつまらないお話をすることができるかしら、理性的にお話しすることができて?」
「リーズ」は落ち着いているのでしょうか、「アリョーシャ」を噛んだ子供のことまで気にしていますが、14歳にしてすでに母親的なことろがあらわれていて驚きますね。
しかし、自己本位ということはなく、自分が話をするにあたって「アリョーシャ」の傷の痛みのことも気にかけるやさしさも持っています。
「十分できますとも、それに今はもう痛みもそれほど感じませんし」
「それは指をお水につけているからよ。お水をすぐに換えなければ。じきに温まってしまうんですもの。ユーリヤ、大急ぎで穴蔵から氷の塊と、新しくうがいコップにお水を入れて持ってきてちょうだい。さ、これであの子も行ってしまったから、用件をお話ししますわ。アレクセイ・フョードロウィチ、昨日さしあげたあたしの手紙を返していただきたいの、今すぐに。だって今ママが来ますし、それにあたし・・・」
「手紙はここに持っていないんです」
「嘘、持ってるくせに。そうお返事なさるってことくらい、ちゃんとわかっていたわ。手紙はそのポケットに入っているんでしょうに。あたし、あんなばかげた冗談をして、一晩じゅう、そりゃ後悔していたのよ。手紙を今すぐ返してちょうだい、ねえ、返して!」
「あっちに置いてきたんです」
「でも、あんなばかげた冗談を書いた手紙をお読みになったあとでは、もうあたしを小さな娘と、ほんのちっぽけな娘と見なすことはできないわね!ばかげた冗談のことは、ほんとにお詫びします、でも手紙は必ず持ってきてちょうだいね。もし本当に今持っていないのなら、今日のうちに持っていらして、必ず、必ずよ!」
昨日自分で書いておきながら、今日になって「あんなばかげた冗談」などと言う女心はわかりませんね。
「今日はとてもだめですよ。修道院に戻ったら、こちらへは二日か三日、へたをすると四日は伺えませんから。なぜってゾシマ長老が・・・」
「四日も?そんなばかな!ねえ、あたしのことをうんと笑ったでしょう?」
「ちっとも笑いませんよ」
「なぜ?」
「だって、何もかも、すっかり信じたからです」
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