2017年6月24日土曜日

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「あたしを侮辱なさるつもり?」

「とんでもない。僕は手紙を読み終ると、すぐ、何もかもこのとおりになるだろうと思いましたよ。だって、ゾシマ長老がお亡くなりになったら、僕はすぐに修道院を出なければならないからです。それから僕は学業をつづけて、試験に合格する、そして法に定められた年齢に達したら、すぐに僕たちは結婚しましょう。僕はずっとあなたを愛しつづけます。まだよく考えてみる暇もなかったけれど、あなた以上の妻は見つからぬだろうと思ったんです。それに長老も結婚するようにとおっしゃっていますし・・・」

なかなかのプロポーズの言葉だと思いますが、わからないのは「僕は学業をつづけて、試験に合格する」というところで何の試験なのでしょうか。

「だって、あたしは片輪なのよ、車椅子で運ばれる身なのよ!」と、「リーザ」は頰を真っ赤に染めて笑いだしました。

そういうことだったのですね、「リーズ」は自分が片輪ということで結婚できないと思ったのです。しかし、今は「片輪」と言う言葉は使ってはいけないので、「障害がある」とでも言うのでしょうか。

ところで「リーズ」と「リーザ」はどのように使い分けられているのでしょう。

「僕が自分で車椅子を押してあげますよ、でもそのことまでにはあなたも全快するだろうと、僕は信じているんです」

「それにしても、あなたは気違いだわ」と、「リーザ」が神経質に言い放ちました。「あんな冗談から、いきなりそんな下らない結論を出すなんて!ああ、ママが来たわ、ちょうどいい潮時かもしれないわね。ママ、どうしていつもこんなに遅くなるの、こんなに永いことかかってたらだめじゃないの!ほら、ユーリヤが氷を持ってきたわ!」

結婚話はここで中断しますが、この中途半端はいったいどのように進展するのでしょう。

「ああ、リーズ、大きな声をださないでちょうだい、何よりも、そう大きな声をださないでちょうだい。そんな大声をだされると、あたしはもう・・・だって仕方がないじゃないの、あなたが自分で別の場所にガーゼを突っ込んでおくんですもの・・・さんざ探したのよ・・・あなたがわざとやったんじゃないかって、疑ったくらいだわ」

「だけど、この人が指を嚙まれてくるなんて、あたしにわかるはずがないじゃないの。でなかったら、本当にわざとそうしてたかもしれないけど。ねえ、ママ、ママもずいぶん辛辣なことを言うようになったわね」

「辛辣だっていいでしょうに。リーズ、アレクセイ・フョードロウィチの指のお怪我や何かに対して、どういう気持でいるの?ああ、アレクセイ・フョードロウィチ、あたくしをひどく悲しませるのは、個々の出来事や、ヘルツェンシトーベか何かのことではなくて、それらすべてをひっくるめた全体ですわ。それにあたくし堪えられないんですの」

「たくさんよ、ママ、ヘルツェンシトーベのことなんか、もうたくさん」と、「リーザ」が楽しそうな笑い声をあげました。「早くガーゼをちょうだい、ママ、それにお水と。これはただの酢酸鉛の湿布液よ、アレクセイ・フョードロウィチ、今ごろやっと名前を思いだしたわ。でも、とてもよく効く湿布液なの。ママ、ねえどう思う、この人ったらここへ来る途中、往来で子供たちと喧嘩して、その子供に嚙みつかれたんですって。この人のほうがよっぽど子供じゃなくって。小さな坊やだわ。そんなことのあったあとで、この人が結婚なんぞできると思う?だって、この人ったら結婚するつもりなんですってさ、ママ。この人が結婚したところを想像してごらんなさいよ、こっけいじゃないこと、ぞっとするわよね?」

「リーズ」はママに「カーゼと、それから、切傷用の、とてもしみる濁った水薬」を、「ユーリヤ」には「穴蔵から氷の塊と、新しくうがいコップにお水」を頼んだのでしたね。

そして「リーズ」は、いたずらっぽく「アリョーシャ」を見つめながら、神経質な小刻みな笑い声をたてました。

ここのあたりの「リーズ」と「ホフラコワ夫人」の掛け合いの会話はあれこれといろんなことを言い放ち、支離滅裂で突飛でなかなかついていけません。

たぶん「リーズ」と「ホフラコワ夫人」が常に行動をともにしていて、気心が知れており第三者にはわからないような省略された会話がなされているということもあるのでしょうし、もちろん「アリョーシャ」を迎えてふたりとも興奮状態でもあるのでしょう。


さらに客間には「カテリーナ・イワーノヴナ」と「イワン」いますし。


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