それからさらに額の赤い布を少しでも格好よく見えるように直しました。
「赤のほうがいいな、白いと病院みたいでいかん」と彼はしたり顔に言いました。「で、お前のほうはどうだ?長老はどうした?」
「とてもお悪いのです、ことによると今日亡くなられるかもしれません」と「アリョーシャ」は答えたが、父親はろくにきこうとさえせず、自分の質問もすぐに忘れていました。
聞くだけマシだと思いますが、こんな重要なことですが自分はもう「グルーシェニカ」のことで頭がいっぱいで混乱状態なんでしょう、鏡を四十回ものぞいたり、包帯の色まで気にしていていじらしいと言えばそうですが。
「イワン」は出かけたよ」だしぬけに彼は言いました。「あいつはミーチャのいいなずけを横取りしようと必死になってるんだ、だからこんなところで暮してるのさ」憎さげにこう付け加えると、口をひんまげて「アリョーシャ」を見やりました。
「兄さんが自分でそう言ったんですか?」と「アリョーシャ」はだずねました。
「ああ、それもだいぶ前に言ってたよ。そうさな、もう三週間ほど前になるか。あいつがここへ乗りこんできたのは、俺をひそかに殺すためじゃあるまいか?何か目的があって来たんだろうが?」
本当に「イワン」がそんなことを言ったのでしょうか、「フョードル」は「イワン」が自分の家で暮らしている理由がわかりかねているようですが、それは当然の疑問ですね。
やはり「フョードル」は「イワン」の望みは「ドミートリイ」が「グルーシェニカ」と一緒になって婚約者の「カテリーナ」と別れてくれることだと思っているようです。
逆に「フョードル」が「グルーシェニカ」と一緒になったりすると、「ドミートリイ」は約束通り「カテリーナ」と結婚するかもしれず、「イワン」にとっては最悪のパターンですから。
そういう意味で「フョードル」はじゃまものということで、「イワン」がひそかに自分を殺すんじゃないかと思ったりするのです。
「そんな、お父さん!どうしてそんなことを言うんです?」と「アリョーシャ」はひどくうろたえました。
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