左側のベッドのそばの椅子に、良家の奥さまを思わせるような、更紗の服を着た女性が座っていました。
ひどく痩せた黄色い顔をしており、異常にこけた頬が一目見ただけで彼女の病状を物語っていました。
だが、何より「アリョーシャ」をきぐりとさせたのは、その婦人の眼差し–きわめて物問いたげでいながら、同時におそろしく傲慢な眼差しでした。
しかも婦人は、自分が口を開くまでは、「アリョーシャ」と主人が話し合っている間じゅうずっと、同じように物問いたげな傲慢な様子で、褐色の大きな目を、二人の話し手の上にかわるがわる移していました。
その婦人とならんで左側の窓のわきに、いたってきちんとしてはいるものの貧しい服装をした、赤毛の髪のまばらに薄い、かなり不器量な若い娘が立っていました。
彼女は入ってきた「アリョーシャ」を、さもうとましげに眺めまわしました。
右側の、これもベッドのわきに、さらに女性が一人坐っていました。
やはり二十歳くらいの若い娘なのですが、非常に哀れな存在で、せむしであるうえに、あとで「アリョーシャ」がきかされた話によると、両足とも麻痺していざり同然ということでした。
松葉杖がすぐ横の、ベッドと壁の間の隅に立てかけてありました。
気の毒なこの娘の、すばらしいほど美しい善良そうな目が、何か穏やかなやさしさをたたえて、「アリョーシャ」を見つめていました。
このあたりの作者のまずしい人々の詳細な描きかたが見事だと思えるのは、そこに愛があるからでしょう、決して突き放した表現ではないことがわかります。
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