2017年10月27日金曜日

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この厄介な仕事に、つまり「痙攣しながら、のたうちまわり、口から泡をふいている」「スメルジャコフ」を「穴蔵から地上にかつぎだす」ことですね、「フョードル」自身もずっと付き合い、どうやらすっかり肝をつぶして、うろたえた様子で、みずから手を貸しもしました。

しかし、病人は意識を回復しませんでした。

発作は一時おさまりましたが、また再発したため、みなは去年、彼がやはり思いがけなく屋根裏から落ちたときと同じことが起るにちがいないと結論を下しました。

あのときは頭のてっぺんに氷をあててやったことを思いだしました。

氷は穴蔵にまだ残っていましたので、「マルファ」が看病にあたり、「フョードル」は夕方近く医者の「ヘルツェンシトーベ」を迎えにやりました。

医者はすぐに駆けつけました。

病人を丹念に診察したあと(これは県内でいちばん丁寧で注意深い医者で、もうかなりな年配の立派な老人だった)、この発作はきわめて激しく、《危険を生ずるおそれがある》、今のところまだ何とも言えないが、明朝、もし今の薬が利かぬようなら、別の手当をすることにしようと診断を下しました。

病人は離れの、「グリゴーリイ」と「マルファ」の部屋に隣合った小部屋に寝かされました。

このあと「フョードル」は、もはや一日じゅう、不幸につぐ不幸を堪えぬかねばなりませんでした。

夕食は「マルファ」が支度したのですが、「スメルジャコフ」の料理にくらべるとスープは《まるでどぶ水》のような出来ばえでしたし、鶏肉はひからびすぎて、嚙むこともできぬ始末でした。

主人のしごくもっともではありますが、口やかましい非難に、「マルファ」は、鶏はそれでなくても非常に年とっていたのだし、自分は料理を勉強したわけでもないと反論しました。

夕方近く、また別の心配が持ちあがりました。

一昨日から加減をわるくしていた「グリゴーリイ」が、折あしくすっかり寝たきり同然になってしまい、腰が立たなくなったのです。


「フョードル」はお茶をできるだけ早目に切り上げ、母屋にただ一人とじこもりました。


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