こうして約束の場所に到着すると、先方はもう来ていて、われわれを待っていた。
二人は十二歩の距離に分けられ、最初に射つ権利は彼に与えられた。
(123)の計算によると、十二歩というのは9.45mくらいですね。
これほどの距離があると思うところにはなかなか当たりませんね。
わたしは彼の前に面と向い合って快活な様子で立ち、まばたき一つせず、愛情をこめて彼を見つめた。
これから自分のすることを承知していたからだ。
彼が射った。
関係ないのですが、「射」つという漢字は、言偏をつけると全く反対の意味の「謝」るという感じになりますね。
弾丸はわずかに頬をかすめ、耳にかすり傷を負わせただけだった。
「よかった、あなたが人殺しをせずにすんで!」
わたしは叫んで、自分のピストルをひっつかみ、うしろに向き直るなり、高く森の中へ放り棄てた。
「お前の行く場所はそこだ!」
わたしは叫んで、敵の方に向き直った。
「おねがいです、愚かな青二才のわたしを赦してください、自分がわるいのにあなたをさんざ侮辱したうえ、今は人を射つようなことをさせたりして。わたし自身はあなたの十倍もわるい人間です、いや、おそらくもっとわるいでしょう。このことを、あなたがこの世でだれよりも大切にしていらっしゃるあの方に伝えてください」
わたしがこう言い終るやいなや、三人の男がいっせいに叫びだした。
「冗談じゃないですよ」
わたしの敵が言った。
腹を立ててさえいた。
「決闘する気がないんだったら、何のために人騒がせな真似をしたんです?」
「昨日のわたしはまだ愚かでした。でも今日はいくらか利口になったのです」とわたしは快活に答えた。
「そりゃ昨日のことは信じますけれど、今日のことに関してあなたの意見どおりに結論を出すのはむりですな」
「そうですとも」
わたしは叫んで、手をたたいた。
「その点でもわたしは同感です。自業自得ですから」
「で、あなたは射つんですか、それともやめるんですか?」
「射ちません。なんでしたら、あなたはもう一度射ってください。ただ、射たぬほうが賢明でしょうけど」
介添人たちもわめいた。
特にわたしの介添人が息まいた。
「決闘の場に臨んで詫びを入れるとは、なんたる連隊の恥辱だ、そうとわかってさえいれば!」
そこでわたしは彼ら全員の前に立った。
映画のワンシーンのような光景ですがここで切ります。
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