「ミーチャ」はあれこれ指図しながら、せわしげに動きまわりはじめましたが、口のきき方も指図の仕方も順序立っておらず、なにか異様で、まとまりがありませんでした。
何か言いかけては、しめくくりを忘れてしまうのです。
「ペルホーチン」は一役買って手助けしてやる必要を認めました。
彼は本当にいい人ですね。
「四百ルーブル分だぞ、四百ルーブルより少なくせんようにな、あのときとそっくり同じにしろよ」
「ミーチャ」が命じていました。
「シャンパンは四ダース、一本たりと少なくするな」
「なぜそんなに必要なんです、何にするんですか? おい、待て!」
「ペルホーチン」は叫びました。
「これは何の箱だ? 何が入ってる? まさかこれで四百ルーブルじゃあるまいな?」
忙しそうに立ち働いていた店員たちが、すぐさま甘たるい口調で、この最初の箱にはシャンパン半ダースと、前菜のうち《まずさしあたり必要ないっさいの品》、キャンディ、ヌガーなどが入っているだけだと、説明しました。
しかし、主な《食料》はこの前のときと同様、今すぐ別の馬車に積みこんで、やはり三頭立てで発送し、刻限までには届ける、「ドミートリイさまより、せいぜい一時間あとには現地に到着するはずです」ということでした。
「一時間より遅くするなよ。遅くとも一時間以内だぞ。それからゼリーとヌガーはなるべくたくさん詰めておいてくれ。あそこの娘っ子たちが好きだから」
「ミーチャ」は熱心に言い張りました。
「ヌガーは、まあいいとしても、シャンパン四ダースなんてどうするんです? 一ダースで十分なのに」
「ペルホーチン」はもはや腹を立てているにひとしい状態でした。
彼は値段をかけ合いはじめ、明細を要求して、おとなしく引き下がろうとはしませんでした。
それでも、彼が救ったのは全部で百ルーブルにすぎませんでした。
全商品で三百ルーブル分をこえぬということで、話がまとまりました。
「えい、勝手になさい!」
突然、思い直したかのように、「ペルホーチン」が叫びました。
「僕に何の関係がある? どうせ、ただで稼いだのなら、せいぜい撒き散らすといいや!」
「まあ、こっちへ来いや、倹約家さん、こっちへ、腹を立てずにさ」
「ミーチャ」は店の奥部屋に彼をひっぱって行きました。
「今すぐここへ一壜運ばせるから、一杯やろうじゃないか、ええ、ピョートル・イリイチ。いっしょに行かないか。だって、君は実に感じのいい人だものな。こういう人が僕は大好きなんだ」
また、誘っていますね。
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