「大尉さん、ポドヴィソツキイの話きいたことありますか?」
「ポドヴィソツキイって?」
「ワルシャワである人が制限つきバンクやっていました。そこへポドヴィソツキイ来て、千ルーブルの金貨見て、自分も賭ける言いました。バンクの親言いましたね。『ポドヴィソツキイさん、あなた金貨賭けますか、それとも名誉賭けますか?』『名誉賭ける』ポドヴィソツキイ言いました。『それなら、なお結構』バンクの親、こう言って、カードくばったです。ポドヴィソツキイ勝って、千ルーブル金貨もらおうとしました。『待ちなさい』バンクの親が言って、引出しをぬくと、百万ルーブル渡したです。『お待ちなさい、これがあなたの取り分です』そのバンク、百万ルーブルの勝負だったですね。『わたし、そんなこと知らなかった』ポドヴィソツキイ言いました。『ポドヴィソツキイさん』バンクの親、言った。『あなた名誉賭けた、わたしたちも名誉賭けました』ポドヴィソツキイ、百万ルーブルもらったです」
この話は「そこへポドヴィソツキイ来て、千ルーブルの金貨見て、自分も賭ける言いました。」が具体的にどういう状況なのかがはっきりしないので何を言いたいのかわかりませんが、たぶん黙っていればわからないものを、ポーランド人は誠実で自分自身に嘘をつかず金払いもよく良心的であるということでしょうか。
「それは嘘だ」
「カルガーノフ」が言いました。
「カルガーノフさん、ちゃんとした集まりで、そういう口はきかぬものですよ」
この「ちゃんとした集まり」というのは、ポーランド人はロシア人と同席している場なのでそれなりの自国の名誉のようなものを背負っていると思っているということでしょう。
「じゃ、君にもポーランドの賭博師が百万ルーブルくれるさ!」
百万ルーブルとは十億円ですね。
「ミーチャ」は叫んだが、すぐにはっと気づきました。
「すみません、また失礼しました。また失礼なことを言ったりして、払いますよね、百万だって払いますよ、名誉に賭けて。ポーランドの名誉に賭けて! どうです、僕のポーランド語は、は、は! さ、十ルーブルを掛けます、よし、ジャックだ」
十ルーブルは一万円です。
「わたしは一ルーブル女王さまに。かわいいハートのクイーンさんに、ひ、ひ!」
「マクシーモフ」がクイーンの札を押しだして、卑しげな笑い声をあげ、まるでみんなから隠そうとでもするかのように、テーブルにぴったりにじり寄って、テーブルの下で手早く十字を切りました。
「ミーチャ」は勝ちました。
一ルーブルのほうも勝ちました。
ここで「バンク」というトランプのゲームについてはよく知られていると思いますが、わたしはやったことがなく、まったくわかりませんでしたのルールについて少し調べました。
「親が銀行員、その他のプレイヤーが預金者となり、賭けたカードの強弱を競うゲームです。親である銀行員が破産したら預金者の勝ち、預金者がすべて破産したら銀行員の勝ちとなります。」
「預金額・・・各プレイヤー手札であるライフとなるカード。 A、K、Q、J以外のカードを「お金」として扱います。A、K、Q、J以外の使用カード36枚のうち、赤いマークのカードは2000円、黒いマークのカードは1000円の扱いになり、合計金額は 54,000円です。このうち、半分の27,000円分のカードを親である「銀行員」が持ちます。残りの27,000円分を参加プレーヤーである「預金者」に金額が均等になるように配ります。」
「勝負札・・・場に裏向きに並べられた7枚のカード。」
「破産・・・「預金額」としていた手持ちの手札が全て無くなった状態。ゲーム途中で「破産」となると、そのラウンドのゲームが終了するまでゲームには参加できません。」
「赤いマークのカードは2000円、黒いマークのカードは1000円」
「親である「銀行員」がこの16枚のカードを毎ゲームごとに切り、場に7枚、そして「銀行員」の手元に1枚裏向きに配置します。「預金者」(プレイヤー)は場にある7枚のうち1枚に預金額を賭け、銀行員側の裏返された勝負札との勝負を行います。」
「お金のカードの合計金額54,000円のうち、半額の27,000円分のカードが銀行員の手持ちカードとなります。残りの27,000円分を、親以外の参加プレイヤーでカードの色で金額が異なることを踏まえて金額が均等になるように分配します。」
「「預金者」全員の賭け終わったら、「銀行員」は自分の勝負札を、預金者は自分が選択したカードを一斉にオモテ向きにして、カードの強さ勝負となります。銀行員の勝負札の方が預金者の選択した札よりも強ければ、預金者の賭け金はすべて銀行員のものとなります。逆に、預金者の選択した札の方が銀行員の勝負札よりも強ければ、銀行員は預金者が賭けた金額分を自分のカードから預金者に払うことになります。引き分けの場合、勝負札に賭けた賭け金は「預金者」に戻ります。」
以上ですがこれを読んでもさっぱりわかりません、他にも細かいルールがたくさんありますが実際にやってみないとわからないと思いますのであきらめます。
「角折り!(訳注 賭金を四分の一ふやすこと。自分の賭ける札の角を折って表示する)」
「ミーチャ」は叫びました。
「わたしはまた一ルーブル。平賭けでね。わたしは少しずつ平賭けでやっていきますよ」
一ルーブル勝ったことをひどく喜んで、「マクシーモフ」が幸せそうにつぶやきました。
「やられた!」
「ミーチャ」が叫びました。
「倍賭けで七!」
その倍賭けも負けました。
「おやめなさいよ」
突然「カルガーノフ」が言いました。
「倍賭け、倍賭けだ!」
「ミーチャ」は賭金を倍にしていきましたが、何に倍賭けしても、みんな負けてしまうのでした。
一ルーブルのほうは勝ちつづけていました。
「倍賭け!」
「ミーチャ」はすっかり頭にきてわめきました。
「二百ルーブル負けたですよ、あなた。もう二百賭けますか?」
ソファの男が念をおしました。
「何だって、二百も負けた? それじゃ、もう二百だ! 二百をそっくり倍賭け!」
こう言ってポケットから金をつかみだし、「ミーチャ」がクイーンの上に二百ルーブルを放りだそうとしかけたとたん、だしぬけに「カルガーノフ」が片手でそのカードを覆いました。
「いい加減になさい!」
持ち前の甲高い声で彼は叫びました。
「それは何の真似です?」
「ミーチャ」は彼を見つめました。
「もういいでしょう。僕は見ていたくない。これ以上、勝負はなさらないことですね」
「なぜ?」
「なぜでもです。唾でもひっかけて、お帰りなさい、これが理由ですよ。これ以上は勝負をさせませんからね」
「ミーチャ」はあっけにとられて彼を眺めていました。
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