2018年5月23日水曜日

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精力的な活動を展開することに決まりました。

四人の証人の事情聴取はただちに市の副署長に一任し、ここではもうくだくだしく記さぬことにしますが、型どおりの手続きをふんで、「フョードル」の家に立ち入り、現場検証が行われました。

「郡の警察署長」は「ミハイル・マカーロフ」ですが、「市の副署長」とは誰でしょうか、それに事情聴取を受けた「四人の証人」とは「ペルホーチン」と「マリヤ・コンドラーチエヴナ」と「マルファ」と「ホフラコワ夫人」でしょうか。

まだ新顔で仕事熱心な郡会医は、自分のほうから頼みこむようにして、署長と検事と予審調査官とに同行しました。

「郡会医」は「ワルヴィンスキー」ですね、「署長」は「マヴリーキイ・マヴリーキチ」、「検事」というのは検事補の「イッポリート・キリーロウィチ」、「予審調査官」は「ニコライ・パルフェーノウィチ・ネリュードフ」ですね。

あとはごく簡単に記しましょう。

「フョードル」は頭を打ち割られ、完全に死亡していることがわかったのですが、凶器は?

まず確実なのは、のちに「グリゴーリイ」が傷を負わされたのと同一の武器にちがいありませんでした。

できるかぎりの手当を受けた「グリゴーリイ」から、弱々しいとぎれがちの声で語られたとはいえ、負傷したときの模様に関する、かなり筋道の通った話をきくことができて、その凶器もぴたりと探しだされました。

角燈をさげて塀のあたりを探しにかかり、庭の小道のいちばん目立つ場所へ無造作に放りだされてある銅の杵が発見されたのです。

「フョードル」の倒れていた部屋には、べつにとりたてて乱雑さは見られませんでしたが、ベッドのわきにある屏風のかげの床の上から、《わが天使グルーシェニカへの贈り物三千ルーブル、もし来る気になってくれたら》と上書きした、厚い紙の、事務用の大判の封筒が拾いあげられました。

封筒の下の方には、おそらくその後「フョードル」自身が書き加えたのだろうが、《ひよこ(三字の上に傍点)ちゃんへ》と記されていました。

こんな緊迫した状態の時に《ひよこちゃんへ》というのは何だか間が抜けていておかしいですね。

封筒には赤い封蠟で大きな印が三つおしてありましたが、封筒はもはや破られて、空っぽでした。

金は持ち去られていました。

封筒をゆわえてあった細いバラ色のリボンも、床の上で発見されました。

「ペルホーチン」の証言の中で、検事と予審調査官に特別の印象を与えた状況が一つありました。

ほかでもない、「ドミートリイ」が夜明けまでには必ずピストル自殺するだろう、本人もそう決心して、「ペルホーチン」にそんなことを話していましたし、目の前でピストルを装填し、遺言を書いてポケットにしまっていたから、という推測でした。

なおも信ずる気になれなかった「ペルホーチン」が、それなら自殺を阻止するために、行ってだれかに話してくると脅したところ、当の「ミーチャ」はせせら笑って、「間に合うもんか」と答えたといいます。

これは(724)で出てきました、「ペルホーチン」が「ほんとに、だれかに言おう。今すぐ行って、話してこよう」と言ったのにたいして、「ドミートリイ」が「間に合わないよ、君、さ、行って一杯やろうや、進軍だ!」と言ったのでした。

とすれば、本当にピストル自殺をする気など起こす前に犯人を捕えるため、モークロエの現場に急行する必要がありました。

「それははっきりしています。はっきりしてますとも!」

極度に興奮して検事がくりかえしました。

「この種のならず者には、そっくり同じケースが見られるもんですよ。明日はどうせ自殺するんだから、死ぬ前に豪遊しようってわけでね」

酒や食料品を店でしこたま買いこんだ話も、いっそう検事を興奮させるばかりでした。

「ほら、みなさん、商人オルスーフィエフを殺した若者をおぼえているでしょうが。あの男も千五百ルーブルを奪うと、その足で床屋へ行って髪を縮らせてから、金をろくに隠そうともせず、やはり両手にわしづかみ同然にして、女たちのところにしけこんだじゃありませんか」


しかし、現場検証や、「フョードル」の家の捜索、さまざまの手続きなどが、一同を手間どらせました。


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