「しかし、どうしてみんなは、もっとずっと多かったと主張しているんでしょう?」
「言わせておきゃいいでしょう」
「しかし、あなた自身もそう言い張っておられましたよ」
「僕自身も言いましたね」
「この点は、まだ尋問していない人たちの証言によって、さらに確かめてみましょう。お金のことはご心配なく。お金はしかるべきところに保管されて、いずれ万事が・・・・つまり今はじまったばかりの事件が終って・・・・言うなれば、あなたがたしかに権利を持っておられることが立証されたら、お手元に返りますから。ところで、今度はと・・・・」
「ネリュードフ」はふいに立ちあがると、有無を言わさぬ口調で《あなたの服や、その他いっさい》のくわしい厳密な検査を行う《必要と義務》があると、申し渡しました。
ここに至って尋問者側は明らかに強権的になりましたね、強権を持って尋問しているのですから当然のことかもしれませんが、当初は異様と思われるほどに低姿勢でした、これは、たんに「ドミートリイ」の心に取り入って、検察として有利な証言を本人から引き出すためだけの尋問の技術的なことだったのでしょうか、もしそうだとするとちょっと違和感を覚えます。
「いいですとも、みなさん、お望みなら、ポケットを全部ひっくり返してみせますよ」
そして彼は本当に全部のポケットをひっくり返そうとしかけました。
「衣服もぬいでいただかねばなりません」
「何ですって? 服をぬぐんですか? ふん、畜生! このまま身体検査をやってくださいよ! このままじゃいけないんですか?」
「絶対にいけません、ドミートリイ・フョードロウィチ。服をぬいでいただきます」
「お好きなように」
「ミーチャ」は暗い顔で従いました。
「ただ、どうかここじゃなく、カーテンのかげにしてください。どなたが検査するんですか?」
「もちろん、カーテンのかげでですとも」
同意のしるしに「ネリュードフ」はうなずきました。
その顔は一種特別な重々しささえあらわしていました。
ここで小見出しの「三 魂の苦難の遍歴-第一の苦難」「四 魂の苦難の遍歴-第二の苦難」「五 魂の苦難の遍歴-第三の苦難」が終りました。
魂の苦難を三つに分けていますが、その意図がわかりませんが、例えば第一の苦難は愛するものと無理やり引き離される苦難、第二の苦難は心の中をさらけ出さなければならない苦難、第三の苦難とは肉体的な拘束による苦難でしょうか、よくわかりません。
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