「ネリュードフ」はすぐそのとおりにしました。
《ロマンス》の点にこだわるのは、またやめにして、ずばりまじめな問題に、つまり、例によって三千ルーブルというもっとも重要な問題に移ったのです。
「グルーシェニカ」は、ひと月前モークロエで散財したのはたしかに三千ルーブルであり、自分は金を数えたわけでこそないが、「ミーチャ」自身から三千ルーブルだったことをきかされたと、確認しました。
「あなたと二人きりのときにそう言ったんですか、それともほかにだれかいましたか、あるいはまた、あなたのいるところでほかの人たちと話しているのを、おききになっただけですか?」
すぐさま検事が質問しました。
それに対して「グルーシェニカ」は、みんなのいるところでもきいたし、ほかの人たちと話しているのも耳にしたし、二人きりのときに彼自身からもきいた、と申し立てました。
「二人だけのときにおききになったのは一度だけですか、それとも何度もですか?」
ふたたび検事は質問し、「グルーシェニカ」が一度ならずきいていることを知りました。
検事はこの証言にとても満足しました。
この三千ルーブルのことについては、しつこく追求していますね、しかしもう「ドミートリイ」自身がそう言いふらしていることは、大勢の証人がいるわけですから事実と考えてよく、あとは彼が自分で言っているように大げさにそう言っているのかどうかの問題だけであり、客観的な事実があらわれない限り、彼自身しか知らないことです。
さらにその後の質問で、その金の出所、つまり「ミーチャ」がそれを「カテリーナ」から受けとったことも明らかになりました。
「ところで、ひと月前に使った金額が三千ルーブルではなく、もっと少なかったことや、ドミートリイ・フョードロウィチがそのうちの半分をそっくり自分のために取っておかれたという話を、たとえ一度でも、おききになったことはありませんか?」
「いいえ、それは一度もきいておりません」
「グルーシェニカ」は証言しました。
さらに、「ミーチャ」がむしろ反対に、このまる一カ月というもの、金が一カペイカもないと彼女にしきりにこぼしていたことも判明しました。
「お父さまからもらうのを、いつも期待していました」
「グルーシェニカ」はこう結びました。
「では、あなたの前で何かのおりに・・・・ちらとなり、かっとなったはずみになり」
突然「ネリュードフ」が言いました。
「お父上の命を奪うつもりだと言ったりしませんでしたか?」
「ええ、言いました!」
「グルーシェニカ」は溜息をつきました。
「一度ですか、それとも何回かですか?」
「何度か言いました、いつもかっとなったときに」
やはり「グルーシェニカ」は、この状況でどう言えば「ドミートリイ」にとって有利になるかなどということは一切考えずに、何から何まで本当のことを話しています。
「で、実行するとあなたは信じておられましたか?」
「いいえ、一度も信じたことなぞございません!」
彼女ははっきりと答えました。
「あの人の高潔さに期待していましたから」
「みなさん、すみませんが」
突然、「ミーチャ」が叫びました。
「あなた方の前でアグラフェーナ・アレクサンドロヴナに、ほんのひと言だけ話させてください」
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