「君も気づいたと思うけどね、スムーロフ、真冬、零下十五度も十八度もあるときのほうが、たとえば今みたいに、冬のはじめに突然、思いがけない寒さに見舞われたときほど、寒く感じないものだよ。今みたいに、零下十二度で、しかもまだ雪が少ないときほどはね。つまり、人間がまだ慣れていないからなんだ。人間なんて、すべて慣れさ。国家や政治の関係でも、何事でもね。慣れが、いちばんの原動力なんだ。それはそうと、なんてこっけいな百姓だろう」
寒さの「慣れ」というのは、よくわかるのですが、「国家や政治の関係」での「慣れ」というのはどういうことでしょうか、亀山郁夫訳では「習慣」となっています、「慣れが、いちばんの原動力なんだ」というのは「習慣」の方がわかりやすいですね。
「コーリャ」はものすごく理屈っぽいですね、それがある傾向のある中学生として当たり前なのかどうか中学生の気持ちは昔のことなので私はよくわかりませんが。
「コーリャ」は、自分の荷馬車のわきで手袋をはめた両手を寒さしのぎに打ち合せている、人のよさそうな顔をした、外套姿の大柄な百姓をさしました。
百姓の長い栗色の顎ひげが、寒さのためにすっかり霜で覆われていました。
「この百姓のひげは凍ってら!」
わきを通りしなに、「コーリャ」がからかい顔に大声で叫びました。
「たいていの者が凍ってるさ」
それに答えて百姓が穏やかな、さとすような口調で言いました。
「からかわないほうがいいよ」
「スムーロフ」がたしなめました。
「平気さ、怒りゃしないよ、いい人だもの。さよなら、マトヴェイ」
「さよなら」
「あれ、ほんとにマトヴェイっていうの?」
「マトヴェイだよ。知らなかったのかね?」
「知らなかった。当てずっぽうに言ったんだ」
「こいつめ。中学生らしいな?」
「うん、中学生だ」
「それじゃ何か、鞭でぶたれるんだな?」
「そういうわけでもないけど、まあね」
「痛いだろう?」
「いくらかはね!」
「気の毒にな!」
百姓は心の底から溜息をつきました。
「さよなら、マトヴェイ」
「さよなら。かわいい坊主だな、ほんとに」
二人の少年はさらに先へすすみました。
「あれはいい百姓だな」
「コーリャ」が「スムーロフ」に言いました。
「僕は民衆と話すのが大好きなんだ。いつでも喜んで民衆の価値を認めるつもりだよ」
「どうして、学校では鞭でぶたれるなんて、あの人に嘘をついたの?」
「スムーロフ」がたずねました。
(860)では「コーリャ」は「中学生よ、嘘を軽蔑せよ、これが第一。たとえよいことのためにでも、これが第二。」とか言っていましたが。
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