「それに、大体僕は子供好きなんです。今もわが家でちびっ子を二人面倒をみてましてね、今日もそれで手間どったんです。まあ、そんなわけで、イリューシャいじめも終りましたし、僕はあの子をかばってやることにしたんです。気位の高い子だってことはわかっていました。これだけは言っておきますけど、気位の高い子でしてね。それがしまいには、僕に奴隷のように心服して、どんな些細な僕の命令でもはたすし、僕の言葉を神のお告げみたいにきいて、なんでも僕の真似をするようになったんです。休み時間になるとすぐ僕のところへやってきて、いっしょに歩きまわる。日曜もそうです。中学校では、上級生が下級生とこんなふうに仲よくしてると、冷やかされるんですけど、これは偏見ですよね。それが僕の夢なんです。それだけのことですよ、そうでしょう? 僕はあの子を教え、仕込んでやりました。だって、あの子が僕の気に入ったからには、仕込んでいけない理由はないでしょう? あなただって、カラマーゾフさん、あんなちびっ子たちと仲よしになったのは、つまり、若い世代に感化を与え、仕込んで、役に立ちたいと思ってるからでしょう? 実を言うと、人の噂で知った、あなたの性格のそういう一面が、いちばん僕の興味をひいだんです。もっとも、本題に戻りましょう。そのうちに僕は、あの子の内に一種の感傷が、センチメンタリズムが育ってきたのに気づいたんです。ところが僕は生まれたときから、そういうべたべたした愛情の断固たる敵でしてね。おまけに、矛盾しているんですよ。気位が高い子なのに、僕には奴隷のように心服したり、奴隷のように心服してるかと思えば、いきなり目を光らせて、僕の言葉に同意しようとさえせずに、食ってかかって、気違いみたいになってしまったりするんです。ときおり僕はいろいろな思想を教えてやったんですけど、あの子はその思想に同意できないというのじゃなくて、僕に対して個人的な反抗をしてることがわかったんです。それというのも、あの子の愛情に対して僕が冷淡な態度で応ずるからなんです。あの子をしごいてやるために、僕はあの子がやさしくすればするほど、いっそう冷淡にしてやりました。わざとそう振舞ったんです。それが僕の信念ですからね。あの子の性格を鍛えて、むらのないものにし、人間を創ってやるつもりでした・・・・ところが・・・・そう、もちろんあなたは話半ばで僕の言いたいことをわかってくれるでしょう。そのうちにふと気がつくと、あの子は一日、二日、三日と思い悩み、悲しんでいる様子なんです。それが愛情のことなぞじゃなく、何か別の、もっと強烈な、高度のことらしいんです。・・・・
「コーリャ」の長い会話はまだ続いていますが、ここで一旦切ります。
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