2018年8月4日土曜日

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「こら、ちびっ子たち」

部屋に一歩踏みこんで、「コーリャ」は言いました。

「どうやら、君たちは危険人物らしいな!」

なぜ「危険人物らしい」のでしょうか。

「ペレズヴォンもいっしょ?」

「コースチャ」がにっこりし、指を鳴らして「ペレズヴォン」をよびはじめました。

「ねえ、ちびっ子たち、僕は困ってるんだよ」

「コーリャ」はしかつめらしく切りだしました。

「君たちにも助けてもらわなけりゃ。アガーフィヤはいまだに帰らないところをみると、もちろん、足でも折ったのさ、それに決ってるよ。ところが僕は出かけなけりゃならないんだ。君たち、僕を行かせてくれるかい、だめ?」

子供たちは心配そうに顔を見合わせました。

にっこりしていた顔が不安をあらわしはじめました。

もっとも、二人ともまだ、何を要求されているのか、完全にはわかっていませんでした。

「僕がいなくても、いたずらなんかしないね? 戸棚にのぼって、足を折ったりしないね? 君たちだけでも、こわがって泣いたりしないだろう?」

子供たちの顔にひどく悲しそうな色がうかびました。

「その代り、君たちにすごいものを見せてあげでもいいんだ。本当の火薬で撃つことができる、銅の大砲だぜ」

子供たちの顔がとたんに明るくなりました。

「大砲を見せて」

顔じゅうをかがやかせて、「コースチャ」が言いました。

「コーリャ」は鞄に片手を突っ込んで、小さなブロンズの大砲を取りだし、テーブルにのせました。

「ほら、どうだい! 見てごらん、車がついてるんだから」

彼は玩具をテーブルの上で少し走らせてみました。

「ちゃんと撃てるんだよ。ばら弾をつめて撃つんだ」

「そして殺しちゃうの?」

「みん殺しちゃうのさ、ただ狙いをちゃんとつけさえすればね」

そして「コーリャ」は、どこに火薬をつめ、どこにばら弾を入れるかを説明し、点火孔の形をした小さな孔を示して、反動もあるのだと話しました。

子供たちはおそろしく好奇心を示してきいていました。

反動があるということが、特に子供たちの想像力をおどろかせました。

「火薬はあるの?」

「ナースチャ」がたずねました。

「あるよ」

「火薬も見せてちょうだい」

かがやくばかりの微笑をうかべながら、彼女は語尾をひっぱって言いました。


「コーリャ」は子供たちの気を惹くのが上手なようですね、ということは、相手が何を考えているのかを察する能力が高いということです。


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