「こら、ちびっ子たち」
部屋に一歩踏みこんで、「コーリャ」は言いました。
「どうやら、君たちは危険人物らしいな!」
なぜ「危険人物らしい」のでしょうか。
「ペレズヴォンもいっしょ?」
「コースチャ」がにっこりし、指を鳴らして「ペレズヴォン」をよびはじめました。
「ねえ、ちびっ子たち、僕は困ってるんだよ」
「コーリャ」はしかつめらしく切りだしました。
「君たちにも助けてもらわなけりゃ。アガーフィヤはいまだに帰らないところをみると、もちろん、足でも折ったのさ、それに決ってるよ。ところが僕は出かけなけりゃならないんだ。君たち、僕を行かせてくれるかい、だめ?」
子供たちは心配そうに顔を見合わせました。
にっこりしていた顔が不安をあらわしはじめました。
もっとも、二人ともまだ、何を要求されているのか、完全にはわかっていませんでした。
「僕がいなくても、いたずらなんかしないね? 戸棚にのぼって、足を折ったりしないね? 君たちだけでも、こわがって泣いたりしないだろう?」
子供たちの顔にひどく悲しそうな色がうかびました。
「その代り、君たちにすごいものを見せてあげでもいいんだ。本当の火薬で撃つことができる、銅の大砲だぜ」
子供たちの顔がとたんに明るくなりました。
「大砲を見せて」
顔じゅうをかがやかせて、「コースチャ」が言いました。
「コーリャ」は鞄に片手を突っ込んで、小さなブロンズの大砲を取りだし、テーブルにのせました。
「ほら、どうだい! 見てごらん、車がついてるんだから」
彼は玩具をテーブルの上で少し走らせてみました。
「ちゃんと撃てるんだよ。ばら弾をつめて撃つんだ」
「そして殺しちゃうの?」
「みん殺しちゃうのさ、ただ狙いをちゃんとつけさえすればね」
そして「コーリャ」は、どこに火薬をつめ、どこにばら弾を入れるかを説明し、点火孔の形をした小さな孔を示して、反動もあるのだと話しました。
子供たちはおそろしく好奇心を示してきいていました。
反動があるということが、特に子供たちの想像力をおどろかせました。
「火薬はあるの?」
「ナースチャ」がたずねました。
「あるよ」
「火薬も見せてちょうだい」
かがやくばかりの微笑をうかべながら、彼女は語尾をひっぱって言いました。
「コーリャ」は子供たちの気を惹くのが上手なようですね、ということは、相手が何を考えているのかを察する能力が高いということです。
0 件のコメント:
コメントを投稿