2018年8月9日木曜日

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「この件に関して僕がおどろいてるのは、アレクセイ・カラマーゾフの役割だよ。兄さんが明日かあさってには、あんな犯罪で裁判にかけられるっていうのに、よく子供相手にそんなセンチメンタルなことをしている暇があるもんだよな!」

「この場合センチメンタルなことなんぞ全然ありませんよ。そういう自分だって、これからイリューシャと仲直りしに行くところじゃないの」

「センチメンタル」とう言葉が何度も使われていますが、何と訳せばいいのでしょう、「感情的」「感傷的」「情が深い」ということでしょうが、ぴったりの類語が見つかりません。

「仲直り? こっけいな言い方をするなよ。それにしても、僕は自分の行為を分析するような真似は、だれにだってさせちゃおかないからね」

「でも、君が行ったら、イリューシャはさぞ喜ぶだろうな! 君がくるなんて、考えてもいないしさ。でも、なぜ、どうして、こんなに永い間、来てやろうとしなかったの?」

突然、熱をこめて「スムーロフ」が叫びました。

「あのね、坊や、それは僕の問題で、君の知ったことじゃないんだ。僕が行くのはだれにも関係のないことさ、だって、それが僕の意志なんだからね。ところが、君たちはみんな、アレクセイ・カラマーゾフに連れて行ってもらったんじゃないか、つまり、そこに違いがあるんだよ。それに、僕が行くのは仲直りのためでなんぞ全然ないかもしれないのに、どうして君にそれがわかるんだい。ばかな言い方をするなよ」

「カラマーゾフなんか全然関係ないですよ、あの人に連れて行ってもらったわけじゃないもの。ただ、僕たちが自分からあそこへ行くようになっただけですよ。そりゃもちろん最初はカラマーゾフといっしょだったけど。でもべつにそんなことは何もありゃしませんよ、べつにばかなことなんか何もありゃしない。最初に一人、それからまた一人、というふうに行くようになったんです。僕たちのことをお父さんはひどく喜んでくれましたよ。だってね、イリューシャが死んだら、あのお父さんはきっと気が違ってしまうな。イリューシャの死ぬのが、わかっているんだ。でも、僕たちがイリューシャと仲直りしたのを、とっても喜んでましたっけ。イリューシャは君のことをたずねて、それ以上何も言いませんでしたよ。たずねたっきり、黙りこんじまって。あのお父さん、気が違うか、でなけりゃ首を吊るだろうな。今までだって、気違いみたいな振舞いをしてましたものね。あのね、あのお父さんは立派な人ですよ。あのときは何かの間違いだったんだ、あのとき、あの人を殴ったのは、みんなあの父親殺しがいけないんですよ」

「スムーロフ」は「コーリャ」の二歳年下にもかかわらず、立派に反論していますね、ただ話が行ったり来たりですが。

「それにしても、やはり僕にとってカラマーゾフは謎だね。もっと前に知り合うことだってできたはずだけど、僕は場合によると傲慢にしてるのが好きなもんでね。そのうえ、僕はあの人に関してある見解をまとめたんだけど、これはもっと確かめて、解明しなけりゃいけないな」


「コーリャ」は自分の行動に理屈をつけるのが好きなようですね。


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