2019年2月18日月曜日

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「ちょいとむきになりすぎてね」

「不公平ですよ、不公平ですとも」

「いや、やはりみごとなもんだ。永年この日を待っていたんで、思いきり言ったんですよ、へ、へ!」

「弁護人は何を言いますかね?」

別のグループでは、「ペテルブルグの先生を無意味に刺激しましたね。『感じやすい心を打つ』なんて、おぼえてらっしゃるでしょう?」

「ええ、あれはうかつですわ」

「あせったのね」

「神経質な人ですもの」

「あたしたちはこうして笑っていますけど、被告はどんな気持でしょう?」

「そう、ミーチェニカはどんな気持かしら?」

「弁護士さんは何をおっしゃるでしょう?」

また第三のグループでは、「あの婦人は何者だい、柄付き眼鏡(ロールネット)を持っている、太った、いちばん端に坐ってるのは?」

この「柄付き眼鏡(ロールネット)」とは何でしょうか、だいたいは想像がつきますが、一般的には「ロニエット」とか「ロルネット」とか呼ばれているようです、「ハンドルのついた眼鏡。眼鏡を掛けることを好まない上流階級の婦人が観劇やルーペの代わり (レンズの種類による)に用いた」とのことです。

「あれはさる将軍の奥さんでね、離婚したんだ。あの人なら僕は知ってるよ」

「それで柄付き眼鏡なんぞもってるんだな」

「あばずれだよ」

おしゃれな人の持ち物ということですね。

「いや、ちょいと男好きのする女だぜ」

「あの二人おいた隣にブロンドが坐っているだろう。あのほうがいいよ」

「それにしてもあのときモークロエで、みごとな不意打ちを食わせたもんだね、え?」

「みごとはみごとだけど、またあのお話じゃね。なにしろ軒並みにどれだけ話してまわったかしれないんだから」

「今も我慢しきれなくなったってわけさ。うぬぼれが強いからな」

「不遇の身だからね、へ、へ!」

「それに失敬な男だよ。おまけに美辞麗句は多いし、文章は冗漫だし」

「それに脅しをかけるしな。どうだい、のべつ脅してたじゃないか。トロイカのくだりをおぼえてるかい? 『ハムレットはあちらの話で、わが国では今のところまだカラマーゾフなのであります!』ときたもんだ。あっぱれだね」

「あれは自由主義に当てつけたのさ。こわいんだよ!」

「それに弁護士もこわいのさ」

「そう、フェチュコーウィチ先生、何を言うかな?」

「いや、何を言っても、しょせん百姓どもの心は動かせないよ」

「そう思うかい?」

第四のグループでは、「あのトロイカの話はよかったですな、あれは諸民族のくだりでしたね」

「たしかにあのとおりですよ、ほら、諸民族はぼんやり待ってはいないだろうと言ったくだりはね」

「何のことです?」

「先週イギリスの議会で、さる議員がニヒリストのことで政府に質問したんですよ。あの野蛮な国民を教育するために、そろそろ介入していいころではないかって。イッポリートはそのことを言ってるんです。僕は知ってるけど、その話ですよ。先週その話をしてましたからね」

「山しぎ来たるもなお遠し、ですよ(訳注 待っててもらいたいものですなの意)」

「山しぎって何のことです? どうして、遠いんです?」

本当に「山しぎ来たるもなお遠し」って何でしょう、訳注を読めばわかりますが、ネットでも探せませんでした、出典は何なのでしょう、そして、なぜ「山しぎ」なのでしょうか。

「こっちはクロンシタットを閉鎖して、やつらに麦をくれてやりませんからね。そしたらどこで手に入れます?」

これは「クロンシタット」は、「ロシア北西部,レニングラード州の都市。1723年までクロンシロート Kronshlot。サンクトペテルブルグの西約 30km,フィンランド湾東部のコトリン島にある港湾都市。1703年ピョートル1世がサンクトペテルブルグ防衛のため,要塞と軍港を構築したのが始まりで,バルチック艦隊の根拠地となって発展。また 1875~85年湾奥のサンクトペテルブルグへいたる水路が掘削されるまでは,貿易港としてもにぎわった。しばしば反乱の舞台となり,ロシア革命時にはクロンシタットに駐屯する水兵が大きな役割を果たした(→クロンシタットの反乱)。また第2次世界大戦中レニングラード包囲戦に際しては,その防衛に大きく貢献した。港は 12月初旬から 4月まで結氷するため,砕氷船が出動する。人口 4万2992 (2005推計) 。」とのこと、「麦」の一件はどういう事件なのでしょうか。

「だって、アメリカは? この節はアメリカから輸入してるんですよ」

「嘘をつきたまえ」

しかし、鐘が鳴り、だれもが席にとんで帰りました。


「フェチュコーウィチ」が壇にのぼりました。


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