「カテリーナ」は発作を起こしました。
泣きじゃくり、痙攣に息をつまらせました。
みなはまわりでおろおろしていました。
「だから注意しておいたでしょうに」と、上の叔母が言いました。「こんなことは止めたはずよ・・・あなたはむきになりすぎますよ・・・よくこんな思いきったことができたものね!あなたはああいう手合いを知らないからだけど、あの女はいちばん悪いって話だわ・・・いいえ、あなたはわがまますぎますよ!」
「上の叔母」というのは、父親の最初の妻の妹で「口数の少ない素朴な人」の方で、「モスクワ・マダム」ではありませんね。
たぶん、「カテリーナ」が「グルーシェニカ」と会うことに猛反対したのでしょうが、「カテリーナ」がむきになって自分の意志を通したことに腹を立てているのでしょう。
「あれは虎だわ!」と、「カテリーナ」が叫びました。「なぜ、止めたりなさったの、アレクセイ・フョードロウィチ、ひっぱたいてやったのに、ひっぱたいて!」
彼女は「アリョーシャ」の前でも自分を抑えることができませんでした。
ことによると、自制したくなかったのかもしれません。
「あんな女、鞭でひっぱたいてやるといいのよ、断頭台で、刑吏の手で、みんなの見世物にして!」
「アリョーシャ」は戸口にあとずさりました。
怖いですね、いくら理性的にみえる「カテリーナ」も心の中では、相手の女性に対してすさましい敵意を持っているのでしょう。
「でも、なんてことでしょう!」とふいに「カテリーナ」が両手を打ち合せて、叫びました。「彼が!あの人がこれほど不実だなんて、こんなに無慈悲だなんて!だって、あの人はあの宿命的な、永遠に呪われた日、あそこで起こったことを、あんな女に話してしまったんだわ!『美しさを売りにいらしたんでしょう、お嬢さま!』だなんて。あの女は知っているんだわ!あなたのお兄さまは卑劣漢よ、アレクセイ・フョードロウィチ!」
「アリョーシャ」は何か言いたかったのですが、言葉が一つも見いだせませんでした。
痛みに胸がしめつけられました。
「お帰りになって、アレクセイ・フョードロウィチ!あたし恥ずかしい、恐ろしい!明日また・・・おねがいですから、明日いらしてください。あたしを咎めないで、許してください。このうえ自分の身に何をしでかすか、わかりませんもの!」
「アリョーシャ」はよろめくようにして通りに出ました。
彼女のように、自分も泣きたいと思いました。
ふいに女中が追いすがりってきました。
「お嬢さまがホフラコワ様のお手紙をお渡しするのを、お忘れになったそうですので。お昼のお食事のときからお預かりしておりましたのに」
「アリョーシャ」は小さなバラ色の封筒を機械的に受けとり、ほとんど意識せずにポケットにねじこみました。
女中がその手紙のことを「お昼のお食事のときからお預かりしておりました」と言っていますので、昼食は「ホフラコワ夫人」と「リーザ」と一緒にとったのでしょうか、それとも昼食時に誰かが手紙を届けたのでしょうか。
時系列がわからなくなりそうですので、少し整理します。
「アリョーシャ」は修道院でお昼前に「ホフラコワ夫人」と「リーザ」と会っていて、その時に、「カテリーナ」から用事があるから来るようにとの手紙を預かりました。
では、いつ「カテリーナ」は「ホフラコワ夫人」と「リーザ」に手紙を渡したのでしょうか、それは書かれていません。
しかし、「ホフラコワ夫人」は「カテリーナ」が「ドミートリイ」のことなどで悩んでいてある決心をしたということを知っていますので、どこかで会って話をしているのですね。
そして、昼食時です。
その時に、「カテリーナ」は「ホフラコワ夫人」と「リーザ」からの手紙を預かります。
夕方になり、「アリョーシャ」は手紙の指示に従い「カテリーナ」を訪ねました。
そして、今度は「ホフラコワ夫人」と「リーザ」からの手紙を渡されました。
整理してもわかりにくいです。
「カテリーナ」が「ホフラコワ夫人」と「リーザ」に手紙を託した時には「グルーシェニカ」が訪ねてくることは思ってもみなかったでしょう。
しかし、「カテリーナ」が「今ある決心をした」から「アリョーシャ」を自宅に呼んだので「グルーシェニカ」が来なければ、どのような話になっていたのでしょうか。

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