2017年8月5日土曜日

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「あのね、アリョーシャ、修道院を出たら、どんな格好をするの、どういう服装? 笑ったり、怒ったりなさらないで、これはあたしにとって、とてもとても大事なことなんですもの」

「服装のことはまだ考えてませんでしたけどね、リーズ、あなたの好きな格好をしますよ」

「それじゃ、ぜひ濃紺のビロードの背広に、白いピケのチョッキと、グレイのフェルトのソフトにしてほしいわ・・・・ね、さっき、あたしが昨日の手紙は嘘だと言ったとき、あなたを愛していないんだと思ったでしょう?」

今の言葉で言えば、かなり面倒臭い女ですね。

ちなみに、ピケとは布のことで、「表面に縄を密に並べたような感触がある厚手の布。浮き出し織り。ピケ織り。」だそうです。

今からこんな細かいことまで言うということは、結婚したらたいへんなことになりそうですね。

「いいえ、思いませんでしたよ」

「まあ、鼻持ちならない人、付けよう薬がないわ!」

「実はね、あなたが僕を・・・・愛しているらしいってことはわかっていたんですけど、愛していないっていう言葉を信じたふりをしたんです、そのほうがあなたには都合がいいだろうと思って・・・・」

「よけいいけないわ! いけなくもあるし、いちばんいいことでもあるわけね、アリョーシャ。あなたをとっても愛してるわ。さっき、あなたがいらっしゃるとき、あたし占ってみたの。昨日の手紙のことをきいて、もしあなたが平静に取りだして返してくれるようなら(あなたなら、いつだって、それくらいやりかねないんですもの)、つまり、あたしを全然愛してもくれなければ、何も感じてくれないんだ、あなたなんか愚かでつまらない坊やにすぎないし、あたしの一生は終りなんだって。でも、あなたは手紙を庵室に置いてらしたので、それがあたしを勇気づけてくれたのよ。庵室に置いてらしたのは、あたしが手紙を返すように要求するだろうと予想なさって、返さずにすますためなのね、そうでしょう? そうよね? そうでしょう?」

「ああ、リーズ、まるきり違いますよ、だって手紙は今だって、さっきだって、このポケットに持ってるんですもの、ほら」

「アリョーシャ」は笑いながら手紙を取りだし、遠くから示しました。

「ただし、返しませんよ、そこからごらんなさい」

「何ですって? じゃ、さっきは嘘をついたのね、お坊さんのくせに嘘をついたわけね?」

「嘘をついたことになるかもしれませんね」

「アリョーシャ」も笑いました。

「手紙を返さないために、嘘をついたんですよ。この手紙は僕にとってとても大切なんですもの」

ふいに強い感情をこめ、また真っ赤になって、彼は言い添えました。

「これは永久に、だれにも絶対に渡しやしませんよ!」

「リーズ」は感激して彼を見つめていました。

「アリョーシャ」

彼女はまた甘えるような口調で言いました。

「戸口の辺を見てきてくださらない、ママが立ち聞きしていないかどうか?」

「いいですとも、リーズ、見てきましょう。ただ、見たりしないほうがいいんじゃないかな、ねえ? どうしてお母さまがそんなはしたないことをなさると疑ったりするんです?」

「はしたないですって? どうしてはしたないの? 母親が娘の話を立ち聞きするのは、当然の権利で、べつにはしたないことじゃなくってよ」

母親の「立ち聞き」は当然という「リーズ」の意見については驚きます。

「リーズ」は真っ赤になりました。

「よくおぼえておいていただきたいわ、アリョーシャ、いずれあたし自身が母親になって、あたしのような娘ができたら、あたし必ず立ち聞きしますからね」

「本当に、リーズ? 感心しないな」

「まあ、呆れた、何がはしたないのかしら? そりゃ、ごく普通の社交界の話か何かを立ち聞きしたのなら、はしたないでしょうけれど、この場合は娘が若い男の人と一つ部屋にこもっているのですもの・・・・あのね、アリョーシャ、知っておいていただきたいわ、あたし、結婚したらすぐに、あなたのことも見張りますからね、そのうえあなたの手紙はみんな開封して、読ませていただくわ・・・・それだけはあらかじめ承知しておいていただきたいの・・・・」

「ええ、そうなればむろん・・・・」

「アリョーシャ」はつぶやきました。

「ただ、感心しないな・・・・」

「まあ、ずいぶん軽蔑なさるのね! アリョーシャ、ねえ、最初から喧嘩はよしましょうよ。それくらいなら、あなたに本当のことを言うほうがいいわ。もちろん、立ち聞きはいけないことだわ。あたしが間違っていて、あなたが正しいのよ、でもやっぱりあたしは立ち聞きするの」

「せいぜいするんですね。僕を見張ったってべつに何一つ出てきやしませんから」

「アリョーシャ」は笑いだしました。

「アリョーシャ、あなたは将来あたしの言いなりになってくださる? このことも前もって決めておく必要があるの」

「喜んで、リーズ、必ずそうしますよ、ただいちばん大切な問題は別ですけどね。いちばん大切な問題に関しては、もしあなたが同意なさらなくとも、僕は義務の命ずるとおりに行います」

「それでなければいけないわ。だから知っておいていただきたいの、あたしもそれとは反対に、いちばん大切な問題であなたに従うだけじゃなく、どんなことでもあなたに譲歩するわ、そのことは今はっきり誓います、どんなことでも一生涯」

「リーズ」は熱っぽく叫びました。

「それが幸福なんです、幸せなんですもの! そればかりか、誓ってもいいけど、あたし絶対にあなたの話を立ち聞きしたりしないわ、決して、ただの一度も。あなたのお手紙は一通たりと開封なんかしないわ。だって、あなたは正しくて、あたしは間違っているんですもの。たとえどうしても立ち聞きしたくなったとしても-それはもうわかってるんです、でもやっぱり立ち聞きなんかしません、だって、あなたが慎みのないことと見なしてらっしゃるんですもの。今やあなたはあたしの神さまも同然なのよ・・・・ねえ、アリョーシャ、どうしてこの二、三日そんなに沈んでらっしゃるの、昨日も今日も。あなたが心配ごとや厄介なことをかかえてらっしゃるのは、知っていますけど、それ以外にも、何か特別な悲しみをいだいてらっしゃるのが、あたしにはわかるの、もしかしたら秘密のこと?」

ここの恋人どうしの掛け合いは、いろんな策略もあり、嘘もあり、駆け引きもあり、笑いもあり、娘らしさもあり、占いもあったりして、たいへん面白いですね。

作者はよくここまで、若い娘の揺れ動く真理を反映した会話をかけるものだと感心します。


実際のことはわかりませんが、たぶんこれは想像力だけでは書けないのではと思ってしまいます。


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