2018年5月17日木曜日

777

だが、「ペルホーチン」はもはや駆けだしていました。

さもなければ、こんなに早くは放してもらえなかったにちがいありません。

とはいうものの、「ホフラコワ夫人」は彼にかなり好もしい印象を-とんだいまわしい事件に巻きこまれたという不安をいくらか和らげてくれさえするような印象を与えました。

人の好みがきわめてさまざまであることは、周知のとおりです。

『それにまだそれほどの年でもないしな』

好もしい気持で彼は思いました。

『それどころか、あの人の娘と間違えかねないくらいだ』

「ペルホーチン」が「ホフラコワ夫人」のことをそのように思っていることは意外といえば意外ですが、彼女はまだ33歳で服装の趣味もよく生気のある目の愛くるしい人なのですから。

一方、当の「ホフラコワ夫人」はと言えば、彼女はこの青年にただもう魅了されてしまっていました。

『現代のああいう青年にも、あれほどの才気と、あんな几帳面さがあるなんて。しかもあれほど立派な礼儀作法と、容姿をあわせそなえているなんて。現代の青年は何一つできないなんて言うけれど、こんな立派なお手本があるじゃないの』といった具合でした。

おかげで彼女は《恐ろしい事件》のことはすっかり忘れてしまい、寝床に入ってからようやく自分が《死と紙一重のところにいた》ことを突然また思いだして、「ああ、恐ろしいことだわ、なんて恐ろしい!」とつぶやいただけでした。

だが、すぐに彼女は深い快い眠りに沈みました。

それにしても、もし今書いたこの若い官吏とまだそれほどの年でもない未亡人との異常な出会いが、のちにこの正確で几帳面な青年の出世の足がかりとなったりしなければ、わたしとてこんな瑣末な、エピソード的な細事をくわしく述べたりしなかったでしょう。

この話はいまだにこの町では驚嘆まじりの思い出の種になっていますし、ことによるとわれわれも、カラマーゾフの兄弟の長い物語をしめくくったあと、特に一言触れるかもしれません。


とうとう語り手が「わたし」として直接顔を出してきましたね、(771)で「この見出しの「官吏ぺルホーチンの出世の糸口」というのは実感が湧いてきません」と書きましたが、物語に「ペルホーチン」と「ホフラコワ夫人」の恋の関係が加わったわけで、それが彼の出世に何かかかわってくるのだと書かれています、私は何度か通して読んだことがありますが、あまりこのことは記憶に残っていません、ただここでこうして作者が書いているということは、それなりの展開があるのでしょうし、「ことによるとわれわれも、カラマーゾフの兄弟の長い物語をしめくくったあと、特に一言触れるかもしれません」というのは一体何なのか非常に興味深いところです。


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