「ネリュードフ」は話をきき、やはり笑っていました。
検事は笑いこそしませんでしたが、まるで些細な言葉一つ、ちょっとした動き一つ、顔のごく小さな線のちょっとした震え一つ、見のがすまいと望むかのように、目をそらさずに鋭く「ミーチャ」を観察していました。
この観察力はさすがに心理分析にすぐれていると噂される検事だけありますね。
「しかし、われわれは最初からあなたにそうしているじゃありませんか」
なおも笑いつづけながら、「ネリュードフ」がやり返しました。
そうです、ここで「ネリュードフ」が単に「そう言いました」ではなく、まさに「やり返しました」という方がいいですね。
「なぜ、朝早く起きただの、何を食べたかなどという質問で、あなたをまごつかせたりせず、むしろ本質的すぎるような問題からはじめたはずですがね」
「わかっています。わかったからこそ、ありがたく思っているのです。わたしに対する今のあなたの、高潔な心にふさわしい、ほかに例を見ぬほどのご親切は、いっそうありがたく思っています。ここに集まった三人は、いずれも高潔な人間ばかりですから、今後われわれの間では万事、貴族の地位と名誉とで結ばれた、教養ある、上流社会の人間同士の相互信頼にもとづいてやっていこうじゃありませんか。いずれにせよ、人生のこんな瞬間、名誉が傷ついたこんな瞬間にも、あなた方を最良の友と考えさせてほしいものですね。こんなことを言って、失礼じゃないでしょうか、みなさん、失礼じゃありませんか?」
なんだか、これからはじまる尋問について「ドミートリイ」はある程度であるかもしれませんが自分で主導したいという気持ちがあらわれているようです。
「とんでもない、実に立派なお言葉です、ドミートリイ・フョードロウィチ」
賞讃するように、重々しく「ネリュードフ」が言いました。
「それから瑣末な質問は、みなさん、ことさら話をややこしくするようなこまごましたことは、やめてくださいよ」
「ミーチャ」が感激したように叫びました。
「でないと、どんな結果になるか、わかったもんじゃありませんからね、そうでしょう?」
「分別あるご忠告に喜んで従いますとも」
だしぬけに検事が「ミーチャ」をかえりみて、口をはさみました。
「それでも、先ほどの質問を引っ込めるわけにはいきませんね。いったい何のためにそれほどの大金が、つまりまさしく三千ルーブルという大金が必要になったのか、ぜひとも伺わねばならないのです」
ここではじめて検事「イッポリート・キリーロウィチ」からの反撃がはじまったようです。
「相手はだれですか?」

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