2018年7月8日日曜日

829

「人間がどうしてでたらめを言うかは、非常に断定がむずかしいものでしてね、ドミートリイ・フョードロウィチ」

「人間がどうしてでたらめを言うかは」いろいろな場合があって・・・・ということでしょう。

検事が言い含めるように言いました。

「ところで、教えていただきたいんですが、あなたがお守り袋とよんでおられる、頸にかけていたその袋は、大きいものでしたか?」

「いいえ、大きくありません」

「たとえば、どのくらいの大きさです?」

「百ルーブル札を半分に折ったくらいの大きさですね」

「いっそ切れ端でも見せていただくほうがよさそうですね? どこか、身につけておられるんでしょう?」

身体検査を終えていますから、今身につけているなんてことはあまり可能性のあることではないと思いますが。

「え、畜生・・・・なんてばかばかしい・・・・そんなもの、どこにあるか知りませんよ」

いえ、この袋の在り処を問う質問はばかばかしくはありませんね。

「しかし、待ってくださいよ。いったい、いつ、どこで頸からはずしたんです? ご自分で証言なさってるように、家へは寄らなかったんでしょう?」

「フェーニャのところを出て、ペルホーチンの家へ行ったとき、途中で頸から引きちぎって、金をぬいたんです」

(825)でも「ドミートリイ」は「・・・・昨日、フェーニャのところからペルホーチンの家へ行く途中、僕はその袋を頸から引きちぎる決心をした」と言っていました。

「暗闇で?」

「なぜ蝋燭が要るんです? 指で一瞬のうちにやってのけましたよ」

「鋏もなしに、往来でね?」

「たしか広場でだったな。なぜ鋏なんぞ? 古いぼろ布だから、すぐに破れたんです」

「そのあと、どこへ棄てました?」

やっと、その質問がきましたね。

「その場で棄てましたよ」

「その場所は?」

「広場です。とにかく広場でです。広場のどこか、わかるもんですか。そんなことが、なぜ必要なんですか」

必要なのは当たり前のことではないでしょうか、「ドミートリイ」はそんなこともわからないのでしょうか。

「これはきわめて重要なんですよ、ドミートリイ・フョードロウィチ。あなたに有利な物的証拠ですからね。どうしてそれが、おわかりいただけないんでしょうね? で、ひと月前に袋を縫うとき、だれが手伝ってくれたんですか?」

「どうしてそれが、おわかりいただけないんでしょうね?」と言うのは、わたしの疑問と同じです。

「だれにも手伝ってもらいませんよ、自分で縫ったんです」

「あなたは裁縫の心得があるんですか?」


「兵隊は裁縫ができなけりゃいけないんです、それにこの場合、心得もへちまもありゃしませんや」


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