「それにまた、現在僕らのやっているギリシャ・ラテン語だってそうですよ。(訳注 一八六〇年代の末から中学における古典語教育が強化され、教育の反動化として進歩派から攻撃された)あんなものは狂気の沙汰以外の何者でもありませんよ・・・・カラマーゾフさん、あなたはまた僕に同意してくださらないようですね?」
「同意できませんね」
「アリョーシャ」は控え目な微笑をうかべました。
「ああいう古典なんて、もし僕の意見をすっかりおききになりたけりゃ言いますけど、あれは警察の学生対策ですよ、もっぱらそのために設けられたんです」
ふいにまた「コーリャ」は、しだいに息を切らせはじめました。
「あれが必修になったのは、退屈だからです、才能を鈍らせるからですよ。退屈だったものを、もっと退屈にするにはどうすればいいか? ナンセンスだったものを、もっとナンセンスにするにはどうすればいいか? そこで古典語の授業を思いついたってわけです。これが古典語についての僕の考えですし、この考えを僕は決して変えないと思いますよ」
「コーリャ」は語気鋭く結びました。
両頬にさっと血がのぼって赤い点を作りました。
「異議なし」
おとなしくきいていた「スムーロフ」が突然、確信にみちた甲高い声で同意しました。
「それでも当人はラテン語じゃ一番なんだよ!」
ふいに少年たちの一人が叫びました。
「そうだよ。パパ、自分はああ言ってるけど、ラテン語ではクラスでトップなんだから」
「イリューシャ」も応じました。
「それがどうなんだい?」
この賞讃も非常に快いものではありましたが、「コーリャ」は自衛の必要を認めました。
「僕がラテン語を暗記するのは、そうしなけりゃならないからだし、学校を卒業するとお母さんに約束したからだよ。それに僕に言わせると、いったん取り組んだからには、ちゃんとやるべきだからね。でも心の奥底ではあんな古典主義や、ああいう卑劣なものはすべて軽蔑しているんだ・・・・賛成できませんか、カラマーゾフさん?」
「なぜ《卑劣なもの》なんです?」
また「アリョーシャ」が苦笑しました。
「だって考えてもこらんなさいよ、古典作家はすべてあらゆる国語に翻訳されてるでしょう、だとすればラテン語が必修になったのは、古典作家の研究のためなどじゃ全然なくて、もっぱら警察の学生対策と、才能を鈍らせるためじゃありませんか。これがどうして卑劣じゃないんです?」
「だれが君にそんなことを吹きこんだんです?」
ついに「アリョーシャ」がびっくりして叫びました。
この「コーリャ」対「アリョーシャ」の戦いは面白いですね、まさしく「コーリャ」の意見は当時の進歩的な意見をそのまま披露しているように思えますが、ここで「アリョーシャ」はどういう言い方をするのでしょうか、この議論がふたりだけでなく、多くの他者の目の前で行われているということにも意味があると思います。

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