2018年10月13日土曜日

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「ええ、でたらめは大好き。あたしいつも家に火をつけてみたいと思っているのよ。よく想像するわ、こっそり忍び寄って、火をつけるの。ここはどうしても、こっそりでなければだめね。みんなが消しにかかるけど、家は燃えさかるばかり。あたしは知っているのに、黙っているの。ああ、ばからしい! それに、なんて退屈なのかしら!」

彼女は嫌悪を示して片手を振りました。

「裕福な暮しをしてるからですよ」

苦労がなく暇で何もすることがないので、そんな悪いことを考えるとでも言うのでしょうか。

「アリョーシャ」が低い声で言いました。

「じゃ、貧しいほうがいいのかしら?」

「いいですね」

「アリョーシャ」は「貧しいほうがいい」とはっきりと言っていますね。

「それは亡くなったあのお坊さんが吹きこんだのね。そんなの嘘よ。あたしが裕福で、みんなが貧乏だってかまやしない。あたしはお菓子を食べたり、クリームをなめたりして、だれにも分けてあげないわ。ああ、言わないで、何も言わないで」

「アリョーシャ」が口を開こうとしていないのに、彼女は片手を振りました。

「あなたは今まで、そんなことばかり言ってたから、あたし、それでおぼえてしまったわ。退屈よ。もしあたしが貧乏になったら、だれかを殺すわ、金持になっても殺すかもしれない。ぼんやりしているのなんていやですもの! あのね、あたし刈入れをしたいわ。裸麦を刈り入れるのよ。あなたと結婚するから、あなたはお百姓さんになりなさいよ、本当のお百姓さんに。そして子馬を飼うのよ、いいでしょう? あなたはカルガーノフを知ってらしたわね?」

なんだか支離滅裂ですね。

「知ってます」

「あの人いつも歩きまわって空想ばかりしているのよ。あの人はこう言うわ。なぜ本当に生活する必要があるだろう、空想しているほうがずっといいのにって。空想ならどんな楽しいことでもできるけど、生活するのは退屈だ、なんて。そのくせご当人はもうすぐ結婚するのよ。あたしにも恋を打ち明けたことがあるわ。あなた、こまをまわすことができる?」

「カルガーノフ」が誰と結婚するのでしょうか。

「ええ」

「あの人、こまみたいなもんだわ。精いっぱいまわして、鞭でびゅんびゅんたたいてやるといいのよ。あたしがあの人と結婚したら、一生こまみたいにまわしてやるわ。あなた、あたしの相手なんかしているのが恥ずかしくないの?」

「ええ」

「あたしが神聖なことを話さないんで、ひどく腹を立てているのね。あたしは聖女になんかなりたくないの。いちばん大きな罪を犯すと、あの世でどんな目に会うのかしら? あなたならちゃんと知っているはずだわ」

「神さまの裁きがありますよ」

「アリョーシャ」は食い入るように彼女を見つめました。


「それこそあたしの望むところだわ。あたしが行って裁きを受けたら、あたし、だしぬけにみんなを面と向って笑ってやるわ。あたし、家に火をつけたくてたまらないの、アリョーシャ、この家に。あたしの言うことをちっとも真に受けてくれないのね?」


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