2018年10月5日金曜日

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「坐っていれば大丈夫ですわ。あら、話が混乱してしまうじゃございませんか! あの裁判、あの野蛮な行為、やがてみんなシベリヤへ行ってしまい、ほかの人たちは結婚しますわ、それらすべてがあっという間のことで、すべてが変り、そして最後には何も残らずに、みんな年寄りになって、棺桶をのぞきこむんですわ。でも、かまいません、あたくし疲れましたもの。あのカーチャが、あの魅力的な女性があたくしの希望をすべて打ち砕いてしまったんですもの。今後あの人はあなたの一方のお兄さまについてシベリヤに行くでしょうし、もう一人のお兄さまはそのあとを追って、隣の町に住む、そしてみんなが互いに苦しめ合うんですわ。そう考えると、気が変になりますわ、それに何よりいけないのは世間の評判ですのよ。ペテルブルグとモスクワのあらゆる新聞に、数えきれないくらい何遍も書きたてられましたものね。ええ、そうですとも、考えてもくださいませな、あたくしのことまで書きたてたんですのよ、あたくしがお兄さまの《彼女》だったなんて。こんな不潔な言葉、口にしたくもありませんわ、どうでしょう、考えてもごらんになって!」

何だかよくわららない発言です、「みんなシベリヤへ行ってしまい」とは「ドミートリイ」と「グルーシェニカ」と「カテリーナ」と「イワン」でしょうか、「ほかの人たちは結婚しますわ」とは、「アリョーシャ」と「リーザ」でしょうか、「ホフラコワ夫人」と「ペルホーチン」はないと思いますが。

そして「あのカーチャが、あの魅力的な女性があたくしの希望をすべて打ち砕いてしまったんですもの。」という発言は、「カテリーナ」が「イワン」と結婚することを望んでいた「ホフラコワ夫人」の思いが叶わなかったということでしょうか。

「とんでもない話ですね! どこにそんなことが書いてあったんですか?」

「今お目にかけますわ。昨日受けとって、昨日読んだばかりですのよ。ほら、この『人の噂』という新聞ですわ、ペテルブルグの。『人の噂』は今年から発刊になったんですけど、あたくし噂はひどく好きなものですから、購読していましたら、わが身に火の粉がふりかかるなんて。それもこんな噂じゃございませんか。ほら、ここ、この個所ですわ、読んでごらんなさいまし」

そして彼女は枕の下にあった新聞を「アリョーシャ」にさしだしました。

彼女は取り乱しているというより、なにかすっかり打ちのめされた感じで、実際、頭の中ですべてがごっちゃになっているのかもしれませんでした。

新聞の記事はきわめてアクの強いものでしたから、当然、彼女にひどく微妙な影響を与えるにちがいありませんでしたが、幸いなことに、おそらくこの瞬間の彼女は一つの点に注意を集中する力がなかったため、一分もすれば新聞のことさえ忘れて、まったく別の問題に移っていけるのでした。

すでにあの恐ろしい裁判事件の噂が、ロシア全土にくまなく行き渡っていることは、「アリョーシャ」もだいぶ前から知っていましたし、この二カ月の間に、兄や、カラマーゾフ家全体や、自分自身に関してさえ、他の報道にまじって、どんなにとっぴなニュースや記事を読まされたか、わかりませんでした。

ある新聞には、彼が兄の犯行後、恐ろしさのあまり苦行を受け、修道院にこもった、とさえ書いてありました。

別の新聞ではそれを否定して、反対に、彼が「ゾシマ長老」といっしょに修道院の金庫を破って、『修道院から行方をくらました』と書いていました。

『人の噂』紙の今度の記事は、こんな見出しでした。

『カラマーゾフ事件に寄せて。スコトプリゴーニエフスク市(訳注 家畜を追いこむ町といった意味)から』(悲しいことに、この町はこんな名前なので、わたしは永いこと町の名を隠していたのである)。

やっとここではじめて、この物語の舞台である町の名前が出てきましたが、作者の括弧書きが奇妙です、別にそれならそれで、書かなければいいと思うことをあえて書いています、これは何らかの事情で町の名を書くことを強要されたかのように、今さらここで書くようなことではないと思いますが、書いたからにはその弁解的な理由もついでに書いたのかもしれません。

記事は短いもので、直接「ホフラコワ夫人」には何一つ触れていませんでしたし、概して人名はすべて伏せてありました。


「ホフラコワ夫人」は「あたくしがお兄さまの《彼女》だったなんて。」と言っていますが、これは本当は「グルーシェニカ」のことが書かれているのではないでしょうか。


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