「ホフラコワ夫人」の会話の続きです。
「・・・・ご承知のように、もうふた月ほど前から、あたしく、この町に奉職してらっしゃる、あの謙虚でかわいらしい、立派な青年のペルホーチンさんを、うちへお迎えするようになりましたでしょう。あなただって、もう何度もお会いになりましたわね。あの方は立派な、まじめな紳士ですわ、そうじゃございませんこと? あの方がお見えになるのは三日に一遍くらいで、毎日じゃございませんけど(毎日いらしてくださってもよろしいんですのに)、いつもとてもきちんとした身なりをしてらっしゃいますのよ。概してあたくし、あなたのような謙虚で才能のある青年が大好きですの、アリョーシャ、それにあの方はほとんど国家的ともいえる知性をそなえてらっしゃるし、話しぶりもそれは感じがよくって。あの方のためなら、あたくし、必ず口添えをいたしますわ。あの方は将来の外交官ですもの。あの恐ろしい日、あの方は夜中にいらしてくださって、あたくしをほとんど死から救ってくだすったんですの。ところが、あなたのお友達のラキーチンときたら、いつも汚ない長靴で、その足を絨毯に引きずって・・・・一口に言うと、あの人はあたくしに何やら思わせぶりなことさえ言うようになって、一度なぞ、帰りしなに突然、あたくしの手をひどくぎゅっと握りしめたりしましたわ。あの人に手を握りしめられたとたん、急にあたくしの足がわるくなったんですの。あの人、それまでにもうちでペルホーチンさんに会っているんですけど、本当の話、いつもペルホーチンさんをからかって、どういうわけか、牛みたいな声を張りあげるんですわ。あの二人が顔を合わせると、あたくしはもっぱら二人を見物して、お腹の中で笑っていますのよ。ところがある日、あたくしが一人で坐っていると、いいえ、つまりそのころあたくしはもう床についていましたから、一人で横になっていると、突然そこへラキーチンがやってきて、どうでしょう、あたくしの痛む足を詩によんだというわけですわ。ちょっとお待ちになって、あれはたしか、
小さな足よ、かわいい足よ、
わずかに腫れて痛みだす・・・・
とか、何とかいうんですけれど、あたくし詩の文句をどうしてもおぼえられませんの。あそこにありますわ、あとでお目にかけます。ただ、傑作ですわ、それは傑作。単に足のことをうたっただけじゃなく、教訓的で、立派に思想を盛りこんでいて。ただ、あたくし忘れてしまいましたけれど、一口に言って、そのままアルバムに書きつけておきたいような詩でしたわ。もちろん、あたくしお礼を言いましたし、あの人も見るからに気をよくしていましたっけ。ところが、あたくしがお礼を言うか言わぬうちに、突然ペルホーチンさんがいらしたんですの、ラキーチンはふいに眉を暗くひそめましたわ。ペルホーチンさんが何かあの人の邪魔をしたってことは、あたくしにもわかりました。だって、ラキーチンはその詩のあとですぐあたくしに、ぜひとも何か言うつもりだったんですもの。あたくしもそう予感していたところへ、ペルホーチンさんが入っていらしたんです。あたくし、いきなりペルホーチンさんに詩をお見せして、作者がだれかは言わずにいましたの。でも、すぐに見当がついたと思いますわ。・・・・
「ホフラコワ夫人」の会話の続きですが、予想以上に長いですのでここでまた切ります。
ここまでの「ホフラコワ夫人」の会話の中でわかることは、彼女が「ペルホーチン」と「ラキーチン」と軽い三角関係の中にいるということですね、「ラキーチン」は「ホフラコワ夫人」を好きなのですが彼女はそうではない、「ペルホーチン」も「ホフラコワ夫人」に好意を寄せており、彼女も彼が好きなのでしょう、それにしても「ペルホーチン」が三日に一度顔を見せるというのもすごいと思うのですが、「ラキーチン」や「アリョーシャ」もこの家をよく訪ねてきており、そのように若い男性が頻繁に出入りすることは不自然ではないのでしょうか。

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