ふたたび「ホフラコワ夫人」の会話の続きです。
「・・・・あの方はいまだに白状なさらないで、見当がつかなかったなんて言ってらっしゃるけど。でも、わざとそんなことを言ってらっしゃるのよ。ペルホーチンさんはすぐに笑いだして、こいつはひどい詩だ、いずれどこかの神学生が書いたんだろう、なんて酷評しはじめて、そりゃもう、むきになって、くそみそにけなしましたわ! そしたら、あなたのお友達が、大笑いする代りに、突然すっかりかんかんになってしまいましてね・・・・ほんとに、今にも喧嘩がはじまると思いましたわ。『これは僕が書いたんです』あの人は言うんです。『僕がたわむれに書いたんですよ、なぜって詩を書くなんて、僕は低俗なことと見なしてますからね・・・・だた、僕のこの詩は立派なものです。あなた方の好きなプーシキンは、女性の足をたたえた(訳注 『オネーギン』第一章)という理由で銅像まで建ててもらおうとしているけど、僕のは傾向をもった詩ですからね。そういう君なんぞ農奴制の支持者で、ヒューマニズムなんかこれっぽっちも持ち合せがないんだ、現代の文化的な感情をまるきり感じてもいないし、時代の進歩も君のところは素通りしちまったんだ、君はしょせん役人で、賄賂を取っているのさ!』そこであたくしも大きな声を出して、二人をとめにかかりましたのよ。ところがペルホーチンさんは、ご承知のとおり、弱虫じゃありませんから、突然とても立派な態度をおとりになって、ばかにしたように相手を見つめて、話をきいたあと、謝罪なさったんです。『つい知らなかったもので。知ってさえいれば、あんな失礼は言わずに、ほめたでしょうにね。詩人というのはみんな、とても癇癪もちだそうですから』一口に言って、この上なく立派な態度をよそおって、嘲笑なさったんですわ。あれは嘲笑だったんだと、あとでご自分で説明してくださいましたけど、あたくしは本当に謝罪なさったのだとばかり思っていましたわ。ただあたくし、ちょうど今あなたの前でこうしているように、横になって、ふと考えたんですの。あたくしの家であたくしの客を乱暴にどなりつけたりしたという理由で、ラキーチンをいきなり追いだしたとしたら、立派なことだろうかどうだろうかと考えても、どうにも決めかねて、それはもう苦しくて苦しくて、叱りつけるべきかどうだろうかと、胸がどきどきしてきましたわ。一つの声は、叱りつけろと言いますし、もう一つの声は、いや、叱りつけちゃいけないと言いますでしょう。ところが、もう一つの声がそう言ったとたん、あたくしはいきなり大声をあげて、ふいに気を失ってしまいましたの。もちろん、大騒ぎですわ。あたくしは突然起きあがって、ラキーチンに、こんなことを言いうのは悲しいのだけれど、今後この家には出入りしていただきたくないと、申し渡しましたのよ。こうして追い返してしまったんです。ああ、アレクセイ・フョードロウィチ! あたくし自分でも、まずいことをしてしまったと承知しています。心にもないことばかり言って。あの人に全然腹を立ててなぞいなかったんですもの。それなのに突然、何より肝心なことに突然、そうするのがいいんだ、これはお芝居なんだ、と言う気がしたんですわ・・・・ただ、本当の話、あのお芝居はやはりごく自然でしたのよ、なぜってあたくし泣きくずれてしまいましたし、そのあと何日も泣いていましたもの。そのうち、食後にふと何もかも忘れてしまいましたけど。あの人が出入りしなくなって、もう二週間になりますけれど、あたくしのほうは、ほんとにもう来ないつもりかしら、なんて考えていましたわ。それがつい昨日のことですけれど、だしぬけに夕方この『人の噂』が届いたんですの。読むなり、あたくしあっと声をあげましたわ。だれの仕業でしょう、これはあの人が書いたんですわ。あの日家に帰って、テーブルに向って書きあげて、投稿したのが、掲載されたんです。だって、あれ以来二週間になりますもの。ただ、アリョーシャ、あたくしってひどいおしゃべりですわね、肝心のことはさっぱりお話ししないで。ああ、ひとりでにしゃべってしまうんですわ!」
この「・・・・あなた方の好きなプーシキンは、女性の足をたたえた(訳注 『オネーギン』第一章)という理由で銅像まで建ててもらおうとしているけど」というところがわかりません、また、「ペルホーチン」は「どこかの神学生が書いたんだろう」と言っていますが、神学生と言えば身近には「ラーキーチン」以外にいないですね、本人の前でずいぶん思い切ったことを言ったものです、これも恋敵に対する過剰な攻撃に他ならないでしょう、これに対して「ラキーチン」も「君はしょせん役人で、賄賂を取っているのさ!」と相当侮辱的な言葉で批判しています、結局「ホフラコワ夫人」は「ペルホーチン」の味方をしているのですが、それで「ラーキーチン」も自分の敗北を理解したのでしょう、彼が書いたとすれば『人の噂』の記事は復讐でしょうね。

0 件のコメント:
コメントを投稿