2018年11月13日火曜日

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「イワン」は跳ね起きるなり、力まかせに相手の肩を拳で殴りつけたため、相手は壁のあたりまでよろけました。

いくら何でもこんな暴力が許されてはなりませんと思うのですが、それはかつては家の使用人であったかもしれませんが、今は全く関係ない個人ですし、こういうことが奴隷制のもとでは普通に行われていて疑問さえ感じなったように思われますね。

とたんにその顔が涙に濡れ、「かよわい人間を殴るなんて、恥ずかしくありませんか、若旦那!」と口走ると、彼はさんざ洟をかんだ、青い縞模様のハンカチで目を覆って、低い声でめそめそと泣きはじめました。

一分ほど過ぎました。

「もういい! やめんか!」

ふいに「イワン」は、また椅子に坐りながら、命令するように言いました。

「俺の忍耐にも限度かあるからな!」

「スメルジャコフ」はぼろ布を目から離しました。

皺だらけになった顔のあらゆる線が、たった今受けた侮辱をあらわしていました。

「それじゃ、お前はあのとき、俺がドミートリイと同様に親父を殺したがっていると思ったんだな、卑劣漢め?」

この最後の「?」は何でしょうか。

「あのときのあなたの考えがわからなかったんです」

「スメルジャコフ」が恨めしげに言いました。

「だから、そこのところを探ってみるために、あのとき、あなたが門に入ろうとするところをよびとめたんです」

「何を探るんだと? 何をだ?」

「つまり、その辺の事情をですよ。お父さまが少しでも早く殺されることを、あなたが望んでいらっしゃるか、どうかをです」

何よりも「イワン」を腹立たしくさせたのは、「スメルジャコフ」が頑なにやめようとしない、このねちっこい、不遜な口調でした。

「お前が親父を殺したんだな!」

だしぬけに彼は叫びました。

「スメルジャコフ」はばかにしたようにせせら笑いました。

「殺したのがわたしでないことくらい、あなただってちゃんとご存じでしょうに。わたしはまた、賢い人間ならこんな話はもう二度とするにあたらない、と思ってましたのに」

「しかしなぜ、なぜあの時お前は、俺に対してそんな疑念をいだいたんだ?」

「ご承知のとおり、もっぱら恐ろしさのあまりですよ。なにしろあのころは、恐怖にふるえて、だれのことでも疑うような心境でしたからね。あなたにも探りを入れてみることに決めたんです。なぜって、もしあなたまでお兄さまと同じことを望んでおられるとしたら、そのときはもう万事休すで、わたし自身も蝿と同じようにひねりつぶされてしまう、とそう思いましたのでね」

「おい、二週間前に言ったこととは違うじゃないか」

「病院でお話ししたときも、同じ意味のことを申しあげたつもりですよ。ただ、あなたなら余計な言葉をならべなくともわかってくださるだろうし、それにとても賢い方だからぶっつけの話はご自身も望まないだろう、と思っただけで」

「何だと、畜生! しかし、答えろ、答えるんだ、俺はどこまでもきくからな。いったいどうして、俺のいったい何が、お前の卑劣な心にそんな卑しい疑念を起させたんだ?」


私は「アリョーシャ」が言うように「スメルジャコフ」が犯人だと思うのですが、仮にそうではないとしたら「スメルジャコフ」は一体何でしょうか、殺意の有る無しでみると、殺意があると推測されるのは、本人はどうかわかりませんが、第一に「ドミートリイ」です、また「スメルジャコフ」は「イワン」も殺意があると思って、それを確かめようとしています、しかし、殺意にも強弱があって、「ドミートリイ」には強い殺意、「イワン」は弱い殺意かもしれませんし、それは無意識な殺意なのかもしれません、「イワン」はしつこく「スメルジャコフ」に自分の殺意の根拠をたずねていますが、それは自分の意識下の殺意を確認するためかもしれません、しかしそれを確認したからといってどうなるのでしょう、事件の解明とは関係ないところの話です。


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