2018年11月5日月曜日

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「ふざけた真似なぞ、なんでするはずがありますか。もっぱら神さまに対するように、あなたに期待をかけているというのに!」

「スメルジャコフ」はほん一瞬、目をつぶっただけで、相変らず落ちつきはらって言いました。

「第一にだ」

「イワン」は糾明にとりかかりました。

「癲癇は前もって予告できないことを、俺は知っている。しらべてきたんだから、ごまかしてもだめだ。日時を予告することはできないんだよ。それなのに、あのときお前が日時まで俺に予告したのはどういうわけだ、おまけに穴蔵という場所まで指定してな? あの発作が仮病でないとしたら、いったいどうして、まさしくあの穴蔵へ発作を起してころげ落ちることが、前もってわかったんだ?」

「イワン」は「しらべてきたんだから」と嘘を言っていますね。

「それでなくても穴蔵へは行かねばなりませんでしたからね、一日に何度も」

あわてる様子もなく、「スメルジャコフ」がゆっくりと言いました。

「一年前にもちょうど同じように屋根裏から落ちたことがございました。癲癇の日時を予告できないことは確かですが、予感というのは常にございますからね」

「しかし、お前は日時まで予告したじゃないか!」

「わたしの癲癇のことでしたら、若旦那、ここの先生方におたずねになるのが、いちばんいいですよ。病気が本物だったか、本当でないかをね。これ以上、この問題について申し上げることは何もございませんよ」

「じゃ、穴蔵の件は? 穴蔵のことはどうして前もってわかったんだ?」

「あの穴蔵にずいぶん興味をお持ちですね! あの日、穴蔵におりてゆくとき、わたしは恐ろしさと疑念に包まれていたんです。あなたがいなくなって、もう世界じゅうのだれからも庇護を期待できなくなったので、いっそう恐ろしかったんですよ。あの日、あの穴蔵におりてゆくとき、『きっと今すぐ起るぞ、発作に襲われて、俺は転げ落ちるぞ、そうじゃないかな?』と思うと、その不安のために突然、咽喉のあたりにどうにも避けられぬ痙攣が起って・・・・ころげ落ちたんです。このことや、それからあの前日の夕方、門のわきであなたと話をして、そのときにわたしの不安や穴蔵についてあなたに申しあげたことも、すべて医師のヘルツェンシトゥーベ先生や、予審調査官のニコライさまにくわしく打ち明けましたし、調査官さんはそれをそっくり調書に書いておられますよ。また、この病院のワルヴィンスキー先生もみんなの前で、たしかにこれはそういう考えが原因だ、つまり『落ちるかな、落ちないかな?』という不安のために起ったのだと、特に強調しておられました。あのときはそういう不安が湧きましたからね。ですから、たしかにもっぱらわたしの恐怖心から起ったにちがいないと、そのとおり調書に記録なさいましたんです」

こう言い終ると、「スメルジャコフ」は疲れはてたように、深々と息をつきました。

「それじゃ、お前はもう証言でそのことを供述したのか?」

いくらか呆然として、「イワン」がだずねました。

あのときの二人の会話を話してしまうぞといって脅すつもりだったのに、相手が自分から何もかも供述したことがわかったからです。

「わたしが何をこわがる必要があるんですか? 本当のことはすべて記録してもらってかまいませんよ」

「スメルジャコフ」はしっかりした口調で言いました。


この会話を聞くと「スメルジャコフ」の方が上手ですね。


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