2018年12月13日木曜日

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「そいつは何の上に寝たんだい?」

「きっと何かあったんだろう。笑わないのかい?」

「えらいやつだな!」

なおも異様に張りきって、「イワン」は叫びました。

今や彼は意外なほどの好奇心を示して、きいていました。

「で、どうなんだい、今でも寝てるのか?」

「ところが、それが違うんだよ。ほとんど千年近く寝つづけていたのに、それから起きあがって、歩きだしたんだ」

「阿呆め!」

さながら何事かを一心に思いめぐらすかのように、神経質な笑い声をたてて、「イワン」は叫びました。

「永久に寝ていようと、千兆キロ歩こうと、どうせ同じことじゃないか? だって十億年も歩きつづけるわけだろう?」

「もっとずっとかかるよ。ただ、紙と鉛筆がないんでね、でなけりゃ計算できるんだけど。でも、もうずっと前に歩きついたんだよ。そこから一口話がはじまるのさ」

紙と鉛筆とスマホで計算してみました、千兆キロというのは1に0が15個付きます、1年を365日としますと、24時間×365で8760時間です、1時間で4キロ歩くとしたら、1000000000000000(千兆と入力したら数字が出てきました)÷4で、250000000000000時間かかります、これを8760で割ると約28540000000年になります、千兆キロ歩くにはずっと歩き続けて285億4千万年かかります。

「歩きついただって! どこでそいつは十億年なんぞ手に入れたんだい?」

「君はやっぱり現在のこの地球のことを考えているんだね! だって、現在の地球そのものも、ことによると、もう十億回もくりかえされたものかもしれないんだよ。地球が寿命を終えて、凍りつき、ひびわれ、ばらばらに砕けて、構成元素に分解し、また大地の上空を水が充たし、それからふたたび彗星が、ふたたび太陽が現われ、太陽からまたしても地球が生れる-この過程がひょっとすると、すでに無限にくりかえされてきたのかもしれないじゃないか、それも細かな点にいたるまで、そっくり同じ形でさ。やりきぬくらい退屈な話さね・・・・」

「まあ、いいよ。で、行きついたあと、どうなったんだ?」

「天国の扉を開けてもらって、中へ足を踏み入れたとたん、まだ二秒とたたぬうちに-これはちゃんと時計の上での二秒だよ(もっとも僕に言わせりゃ、その男の時計は、とっくの昔に、道中ポケットの中で構成分子に分解しちまってたはずだけどね)、とにかく二秒とたたぬうちにその男は、この二秒の間に俺は千兆キロはおろか、千兆キロを千兆倍して、さらにそれを千兆倍した距離だって歩きとおしてみせるぞ、と叫んだんだ! 一口に言や、《ホサナ》をうたったわけさ、それも薬がききすぎたもんだから、そこにいたいくらか高尚な思想をもった連中は、最初のうち、その男とは握手もしたがらなかったそうだ。つまり、あまりにもまっしぐらに保守主義者に転向したってわけさ。ロシア人らしい気質じゃないか。くりかえしとくけど、これは伝説だよ。余計なことは何一つ付け加えてない。要するに僕らのところでは、こういったあらゆる問題に関していまだにこんな考え方が横行しているんだよ」


つまり、「悪魔」の話は何を言いたいんでしょうか、昔この地上に来世を否定する一人の思想家がいて、その男が死んだのだが、闇と死の中へ行かないで、目の前に来世があらわれた、男は『これは俺の信念に反する』と言ったので裁判にかけられその結果、男は闇の中を千兆キロ歩けば、天国の扉を開いて、すべてを赦してやることに決った、ところが男は立ちどまって、あたりを眺めると、『歩くなんていやなこった。俺の主義からも歩くもんか!』と道の真ん中に寝そべった、男はほとんど千年近く寝つづけていたのに、それから起きあがって、歩きだして、千兆キロ歩いて天国の門にたどり着いた、そのとたん、「俺は千兆キロはおろか、千兆キロを千兆倍して、さらにそれを千兆倍した距離だって歩きとおしてみせるぞ」と叫んだ、つまり《ホサナ》ということ、まっしぐらに保守主義者に転向したのだが、それがロシア人らしい気質だということですが、話がずいぶん行ったり来たりしていますね、比喩的な話でしょうがよくわかりません。


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